第25話 私が唯一の友達
こんにちは。前田風華です。
日曜日、その日私は出歩いていました。理由は一つ、鳴理さんと会うためです。
私はまず鳴理さんのご自宅へと向かいました。
事前にご自宅を調べていて、場所は特定済みです。
鳴理さんのご自宅に着き、私はインターホンのボタンを押します。すると…………
「はーい!」
インターホンから女の子の声………多分鳴理さんの妹さんの霧子さんでしょう。
「すみません、鳴理さん………金次郎さんの友達なんですけれど、金次郎さんは居ますか?」
ふふふっ。金次郎さん、ですって!なんだか照れちゃいます!鳴理さんともっと仲良くなれれば、私もそう言えるかもしれませんね!
「え、お兄ちゃんのお友達ですか?……すみません、今お兄ちゃんは出掛けて……」
うーん………居ないんですか………。どこに出掛けたのでしょうか………。私は霧子さんに尋ねる事にした。
「どこに出掛けたのか分かりますか?」
「え………………確か友達がやっているお弁当屋に行くと言っていましたけど………」
友達………………お弁当屋…………………。
「分かりました。教えてくれてありがとうございます。」
「え、まさか行くんじゃ………」
鳴理さんの自・称・友達が経営しているお弁当…………ああ、確か亜羅銅四郎さんという男なのか女なのか分かりづらい、ややこしい見た目をした人の家がが経営しているお店がお弁当屋さんだった気がします。名前は忘れましたけど。
「一回行ってみますね。本当に教えてくれてありがとうございます」
「え、いや…………どういたしまして……」
鳴理さんの妹さんの霧子さん。鳴理さんとこれから仲良くなっていく以上、絶対にこれからお近づきになります。それに鳴理さんの家族、きっと優しくて誠実な人。ならば親切にしなくてはいけない。私はそう思います。なので礼儀正しく挨拶して霧子さんと別れました。
そして、例のお弁当屋さんに着きました。そしてそこには霧子さんの言った通り鳴理さんがいました!
そして、自称友達の亜羅さんと話していました。
「ん?………あ!鳴理さん!」
私は偶然を装い鳴理さんに話し掛けます。
「鳴理さんこんな所で会うなんて奇遇ですね!」
「おっ、前田か!うーす!」
はあ…やっぱり鳴理さんは優しいな……女優の姿じゃない、この見窄らしい姿の私に挨拶してくれるなんて………。
「ん?金次郎くんの知り合い?」
とその時ッッッッ!!
自称友達の亜羅さんが話しかけて来ました!
私は正直、鳴理さんの自称友達とは話したくありません。だってきっと、心の中では鳴理さんの事を見下しているからです。
私は昨日、学校に行き部活中のバスケ部の部室から部員全員の財布を盗み、鳴理さんの鍵付きロッカーに全部入れました。
私は演技の他に特技があります。それはピッキングです。ヘアピンで鍵を開け閉めできます。でも何故、どの様な理由で私はこんな事をしたのでしょう。
理由は簡単です。鳴理さん孤立させたかったからです。
まず、鳴理さんがこの一件で周りから嫌われますよね。すると当然鳴理さんは学校で孤立する訳です。そこへ私が鳴理さんに近づき、そしてこう言います。
『私だけは、鳴理さんを信じます』と。
次第に鳴理さんは私を……私だけを頼りにし、そして私だけを友達と……親友と言ってくれます。
そして、私が有名高校生女優…前田穂乃果と伝えます。そうすれば鳴理さんはますます仲良くなってくれます。大丈夫、鳴理さんは絶対に私を前田風華として親友になってくれます。
正直、鳴理さんをそんな目に合わせる自分は最低だと思います。でも、私はなりたい。鳴理さんの唯一の友達に。親友に。
私はその後、鳴理さんと一緒にお弁当屋さんを離れました。理由は当然、鳴理さんに亜羅さんの家のお弁当を食べさせたく無いからです。
そして、私は今、鳴理さんの手を引いて街中を歩いています。そう、鳴理さんと初めて遊んだ街中です。
「ちょっ!どこ行くんだよ前田!」
「決まっていますよ。私と遊びましょう」
「だから、ちょいと急すぎねぇか?てかオレ銅四郎ん家の弁当買いに来たんだけど……!」
「また……今度にしてください。私、今鳴理さんと遊びたいんです!あ、まずはどこかレストランに寄りましょう☆」
私は強く鳴理さんの手を引っ張り、駆け足で街中を進む。嬉しいせいか、顔が微笑んでしまう。
「ちょっと!そんな走んなって!」
「ふふふふっ♡さぁ!行きましょう鳴理さん♡」
「おい!待てって!そんな走ったら疲れんだろ!」
「さーて!どんなレストランに寄りましょうか♡」
「いや聞けぇぇえいぃ!!」
鳴理さんは私の初めての友達。そして唯一の友達。この作成、後戻りするなんてもう遅い、でもする気はない。
鳴理さんを、私が唯一の友達にするようにします。
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