推し活ラプソディ〜晴香は見た!〜
昼月キオリ
推し活ラプソディ〜晴香は見た!〜
結婚から三年。
私は見た。
夕生さんと女の人が仲良さそうに歩いているところを!
これが世に聞く三年目の浮気というやつか?
むむむっ。
スーツをビシッと決めてバリバリのキャリアウーマンって感じだ。
はぁ、勝ち目ないよ・・・って何考えてんの!
あんなにカッコ良かったらモテるんだから浮気の一つや二つや十や二十、あるでしょ!
結婚してくれただけでありがたいんだから!
辞め辞め!大人しく帰ろう。
そして数日後。
休みが重なり、二人は一緒にお昼ご飯を食べていた。
夕生「ねぇ、晴香」
晴香「何ですか?」
夕生「僕が浮気してると思ってるでしょ?」
晴香「ゴフッ!」
晴香は飲んでいた水を吹き出す。
かろうじてコップの中だけで収まったが。
夕生「やっぱりね」
晴香「ゆ、夕生さんって読心術まで使えるんですか?」
晴香は口をティッシュで拭くと質問をする。
夕生「いや、だって晴香顔に書いてあるから」
晴香「え?」
夕生には晴香のおでこに"私は見た"という文字がドドンと書かれているのが見えていた。
夕生「ひょっとして僕が女の人と歩いてるの見たとか?」
晴香「み、見ました」
夕生「それで浮気だと思ってると」
晴香「い、いえ、そんなことは・・・夕生さんはモテますし女性の友人やファンが多いですから仲良い人がいても気にしてませんよ」
夕生「でも、モテるのと浮気するかは別でしょ」
晴香「ふふ、モテるのは否定しないんですね」
夕生「まぁね」
晴香「でも、本当に三日前にたまたま街で見かけただけですから気にしないで下さい」
夕生「晴香の場合、もっと僕に対して怒ったり泣いたりしていいんだからね?僕は対等でいたいんだから、
何を言ったって僕は晴香から離れたり嫌いになったりしないよ」
晴香「夕生さん・・・それじゃあの、三日前に仲良さげに歩いてた人はその・・・」
夕生「その人って髪長くてスーツ着てた?」
晴香「はい」
夕生「ごめん、それ姉貴だ」
晴香「えぇ!?でも、会った時のお姉さんとは雰囲気が全然違いますけど」
夕生「あそこまで変わるのも凄いよねー、ファッション系の仕事してるからさ、会った時は髪下ろして巻いてたしワンピース着てたもんね、化粧も濃かったし」
晴香「な、なんと・・・」
夕生「ね、浮気じゃなかったでしょ?」
晴香「私は浮気だなんて思ってませんよ」
夕生「そんな口をへの字に曲げて言われても説得力ないけどね」
夕生が優しく晴香の頭をポンポンする。
晴香「うぅ、やっぱり子ども扱いです」
夕生「晴香は子どもってゆーか珍獣でしょ」
晴香「もー!夕生さんまで魚ちゃんみたいなこと言うんですか」
夕生「魚崎さんと福田さんみたいに僕も絶滅危惧種みたいな感覚なんだよ」
晴香「ぶーぶー・・・でも、さっき言ってくれたこと嬉しかったです」
夕生「え、さっきって?」
晴香「対等でいたいって、
何を言っても離れたり嫌いにならないって」
夕生「あー、まぁ本心だからね」
晴香「ありがとうございます、私にとってその言葉何よりの力になります」
夕生「僕は晴香の方が心配だけどね」
晴香「えー?私は夕生さんみたいにモテませんから大丈夫ですよ」
夕生「いや、晴香って結構ミーハーだからなぁ」
夕生がふいっと視線を逸らす。
晴香「ミーハーって・・・私は夕生さんしか見てませんよ」
夕生「どうかなー、この間だってイギリス料理のお店のイケメンな店員さんにデレデレしてたし、声優だって僕より好きな声の人いるみたいだし?」
晴香「そんなこと・・・夕生さん、ひょっとして妬いてくれてるんですか?」
夕生「妬いてないしー」
晴香「でも、ほっぺ膨らんでますけど」
夕生は視線を逸らしたまま咄嗟に頬を両手で隠す。
晴香「もう、可愛いですね」
夕生「本当正直者だね晴香は」
晴香「私ですからね」
夕生「まぁ、晴香の場合、浮気したらすぐ顔に"私は浮気しました"って書いてあるの分かっちゃうけどね」
晴香「あはは、ですよね!」
夕生「晴香はさ、そのままでいてよ」
晴香「このままで、いいんですか?」
夕生「うん?」
晴香「バリバリのキャリアウーマンじゃなくても、
前向きじゃなくても?」
夕生「そんなの、晴香じゃないよ」
晴香「私・・・」
夕生「僕は意味不明な行動を取る、宇奈月晴香に惚れたんだから、まぁ、今は海月晴香だけど」
晴香「あー!やっぱり珍獣扱いじゃないですかぁ」
夕生「あはは、いいじゃん、僕が飼い主なんだから」
晴香「え、夕生さんがご主人様?・・・いいかも・・・」
晴香がヘラっと笑う。
夕生「ねぇ、今日は久しぶりにスイーツ食べに行かない?」
晴香「え!いいんですか!?」
夕生「晴香の好きなチョコレート、カフェができたって島谷君が言ってたんだ」
晴香「チョコレートいいですね!」
夕生「まだ12時前だよね、時間もあるしせっかくだから水族館も行かない?久しぶりにさ」
晴香「行きたいです!!」
夕生「じゃあ、支度したらさっそく行こうか」
晴香「はい!」
晴香が鼻歌を歌いながら支度を始めた。
晴香「わーい、わーい、夕生さんとデートだぁ♪」
夕生「クスッ、本当、絶滅危惧種だなぁ」
そんな晴香を見てポツリと呟く夕生であった。
推し活ラプソディ〜晴香は見た!〜 昼月キオリ @bluepiece221b
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます