夏の夕暮れ~とある未来の門下生の日記~
その日は、残暑の厳しい日だった…
うだるような酷暑の中、一日中汗だくになって働いた私はいつものように太陽が沈みかけ、日中より幾分か涼しくなった道を郊外にある自宅へと歩いていた。
「~♪」
ふと、かすかに聞こえた音―
それに足を止め、辺りを見渡すも特に何かがあるわけでもない。
気のせいか、疲れているんだろうと自信を納得させ自宅への道を急ぐ。
「~♪~♪」
しかしどうだろう。
自宅へと歩いていくたびにかすかな音がどんどんと鮮明に聞こえてくるではないか。
「一体何なんだ…またどこかのガキどもがバーベキューでもやってるのか…?」
あの時は深夜までドンチャンと騒がれて翌日寝不足だったなと思い出し辟易とする。
「~♪~♪La~♪」
……なんだろうか、耳なじみのない奇麗な旋律が聞こえた気がした。
いつもなら普段通り家に帰ってさもしい夕飯を一人済ませるところだが
その日は何故か旋律が聞こえたほうへと向かわなくてはならない―
そんな気がしたんだ
「―――」
結論から言おう。
音の正体は声だった
音のするところへとたどり着くとそこには渦のようなものが広がっており―
覗き込むと
―この世のものとは思えない絶世の美女―
蠱惑的なのにどこか親しみやすい雰囲気を持った女性が
暗い世界で歌を唱っていた
彼女はいったい誰なのか、
何故暗い世界にいるのか、
此方からの声は届くのか
そんなことより彼女の歌を聴きたいと、そう強く願っていた
気付けば辺りは闇に包まれ目の前に映っていた渦も消失していた。
私はどうやって家に帰ったか、それすら記憶にはない。
今になって思えば、恐らくこの時すでに私は魅了されていたのだろう
とても奇麗な声の人―
あの人にまた、会えるだろうか―――
悶々とした思いを抱えながら動画サイトを覗いていると―
「私は音大首席でオペラが歌える準備中Vtuber!」
―っ!!
あの人だ!
絶対あの人に違いない!
嗚呼、此方の世界へと来たのですね。
こちらの世界で貴女が好きな歌を幸せに歌える事を切に願う―
ワンドロ用に書いたもの置き場 Elma(旧名:mekia) @mekia
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ワンドロ用に書いたもの置き場の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます