『五千キロ 離れて同じ 月を見る おやすみまでの 電子の逢瀬』
『月』を見るために顔を上げる。どれだけ相手と離れていようとも、月と自分の距離からすればほんの少しの誤差ぐらいの距離感覚。
月は遠くて大きすぎて自分たちの位置情報や目印には使えないけれど、同じ銀の円盤を見ていると、何故だかとても近く感じてくる。
結句の『電子の逢瀬』。
このドラマ感と言葉の響きが好きでした。
メッセージなのか、通話なのか、ビデオなのか。どれにせよ、月を目印に電子で待ち合わせをする二人という表現がとてもロマンチックです。
逢瀬という言葉の持つ、硬く大人なイメージが、直前の『おやすみまでの』という言葉の柔らかく、幼い質感によって中和され、とても綺麗で愛らしい言葉に感じるところが不思議でした。
『電子の逢瀬』。
四句の『おやすみまでの』と合わせて、この歌を締めくくるには最高な言葉の出会いだと思います。
他にも、別離の悲しさや、再会への渇望感など。今は離れて暮らす大切な人たちへの想いが綴られた歌がありますので、是非読んでみてください。
素晴らしい作品をありがとうございました。