第6話
ウォォォォ‥。
地を揺らすような吠声が幾重にも重なって響く。
「来たぞー!」
ドラゴン共の襲来を告知する鐘が響き渡る。
「きゃああああ!」
家々が踏み潰され、何人もの人が建物の下敷きになる。
拓や彼方、杏樹ら魔術師軍団や龍斗率いる剣士達が要塞から必死にドラゴンに攻撃を仕掛けるが、相手にならない。
「いつもより数が多い‥。」
「チッ‥。杏樹、俺と離婚しろ。」
「は?!あんた、こんな時に何言ってんの?!」
「こんな時だからだよ!‥俺がこの国を助けたら、お前は結婚したことを死ぬほど後悔するに決まってっからな!」
「はあ?」
「絵恋!」
「はいはい。‥じゃあね、杏樹。」
「おいてめえら、俺達から距離をとれ!」
不可解ながらも、杏樹をはじめとした周りの兵士が2人から離れる。
絵恋が、海流に向かって手を伸ばす。
「森の神よ、彼は楚の僕なり。
僕の本来の姿、顕したまえ!」
海流の肌が黒くなっていく。
色黒になったのではない。
文字通り、黒く変化していくのだ。
海流の身体が硬く、厚くなり、ゴツゴツしていく。
顔は形を変え、歯は大きくなって牙となり、爪も太く鋭くなっていく。
徐々に大きくなっていき、木の高さを越えても、海流は更に大きくなっていく。
鎧が落ち、海流の服はバラバラに破れ、何も身に着けていない状態になった。
「人間」でいえば、真っ裸である。
海流は‥
ドラゴンになっていた。
黒竜。
他のドラゴンは、海流を眺めたまま、1匹たりとも身動き一つしなくなった。
海流が変身した黒竜が、1匹のドラゴンに火を吐きつける。
ドラゴンは大きな声で喚き、全てのドラゴンはそのまま森に帰っていった。
「竜化‥?!そんな魔法、どんな古文書にも書いてなかったわ!聞いたこともない!」
杏樹が叫ぶ。
「どういうことだ‥。海流の魔力は間違いなく平均以下だ!まさか、魔力を封印してたっていうのか‥?」
龍斗が呟く。
「違う。」
後ろから拓が静かに言った。
「人がドラゴンに変化(へんげ)したのではない。
ドラゴンが、人に変化していたのだ。」
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