スキル《絶対殺すマン》持ちの俺は、死ねない少女と旅をする

日並うたたね

第1話 ゲームのやりすぎで死んだ俺、異世界に送られる

「おいおい……なんなんだよこれ」


目の前に倒れているのは、ついさっき仲良くなったばかりの男。

長い耳、白い肌、さらさらの金髪____たぶん、エルフってやつだろう。


そして、その腹に____俺のナイフが突き刺さってる。


意味がわかんねぇ。

なんで、こんなことになっちまったんだ!?


異世界まで来て、やっと・・・仲間ができると思ったのにぃぃぃぃ!!!



数時間前____


「よっしゃあ! ボス撃破〜!!」


ダンジョン攻略型バトルロワイヤル『レプリカント』


サービス開始から2年間。

俺は毎日このゲームをプレイしている。

ダンジョンに潜って宝をあさり、

邪魔な他のプレーヤーは殺す。


基本4人パーティでやるのが基本だけど、俺はソロでやってる。

ソロは気が楽だし____

そもそも一緒にやる仲間がいないから。


ソロでやってて一番厄介だと思う仕様が、

パーティを組んでるやつらは仲間を復活させることができるってところだ。

一度倒したプレイヤーはその場で気絶状態になる。

で、仲間が一定時間そいつに触れると何事もなかったかのように戦線に復帰するんだ。


ずるいよな。こっちは1度でも倒れたら終わりだっていうのに。


そんなゾンビアタックを回避する唯一の方法が「確殺」だ。

気絶したプレイヤーに何度かダメージを与えることで、そいつは完全に死んで2度と起き上がることはできない。


だからこそ、俺みたいなソロプレイヤーはこの「確殺」をいかにとっていくかが重要になってくる。



"この2年間、いかに確殺を取るかってことだけを考えてきた"



ひとり、パーティからはぐれたやつを狙ってみたり。

罠を使って仲間同士を分断させたり。

透明になる薬を使って後ろからこっそり・・・なんてことも。


そんな日々の努力もあってこのゲームじゃ連戦連勝。

今日も宝を沢山持ち帰って気分は上々だ。


それに、最後に戦ったあのパーティ。

連携も取れてて凄く強かった。

そういう奴らと戦って全部奪い取るのが一番楽しい!

達成感が半端ない!!


「今頃くやしがってんだろうな〜」


俺は早速自分のプレイヤー名をSNSで検索した。


このゲームは、一戦終わるごとにつぶやくやつが多い。

平気で自分を殺したプレイヤーの名前を入れてくるから、どんな反応してるのかが結構わかったりする。


「確殺大魔神っと・・・」

「さ〜て、なんてつぶやいてんのかね〜」


A:いや〜最後に戦ったこいつ、マジで強かったな!

B:ってか確殺大魔神って性格歪みすぎてて草

C:まあ今回は運がなかったってことで

D:そそ。また明日潜りにいこうぜ〜


「・・・」

「なんだよ」

「全然凹んでね〜じゃん」


ボフッ


俺はムカついて、ベッドに背中を投げ出した。


「くそ……もっと悔しがれよ」

「本気で勝ちにいったこっちがバカみて〜じゃね〜か......」

「だからエンジョイ勢は……」


……


「いいよなぁ、あいつらは......」


「スー…スー…」



……


ん……


あ〜……


あれ?.....ここ、どこだ?


薄い霧が立ちこめ、辺りには何もない。

空には星がやたらと瞬いてる。


「夢か?」


ポンポン(肩を叩く音)


「ん?」


「こ、こん……にち、は……」


「うおぉっ!?」


目の前に立つのは、ぼやけた輪郭の女。画面がバグってるみたいに揺れてる。


まさか……幽霊!?


「こ、こば……ばん……わ、わ」


「こわっ!!なにこれ!!」


やめてくれ!怖いから!!


「す……すみ……ません」


____ゴスッ!!


女は突然、自分の頭を右手で思いっきり殴った。


「いやぁ、失礼しました。ちょっとエラーが起きていたみたいです」


!?


「驚かせてすみません。わたくし、女神をやっているアラネスと申します。

ようこそ、ザザッ…かみ……たちさん」


女神? 幽霊じゃないのか?


長い緑の髪に白いドレス。たしかに神っぽい見た目ではある。


「今回は、若くして亡くなったあなたを転生させるためにお呼びしました」


……ん?


「え〜っと、ごめん……今なんと?」


「ですから、若くして亡くなったあなたを」


「え!?俺死んだ?死んだの!?」


「はい。しっかりお亡くなりに」


「しっかりってなんだよ!?いや、ってか俺ゲームしたあとベッドでそのまま横になって......」


「はい。死因はゲームのやりすぎです」


「はぁ!?普通、ゲームのやりすぎで死んだりするぅ!?」


「はい。やりすぎは何事も毒になりますから。ご両親にも言われませんでしたか? “ゲームばっかやってると死ぬぞ”って」


「いやいや!"目が悪くなる"とか、"頭悪くなる"とかならあるけどさ!!...流石に死ぬとか聞いたことないわ!!!」


「とにかく。あなたはお亡くなりになりました。ですので、これから転生のお手続きを行います」


……マジかよ。急展開すぎるだろ。


「はぁ…まあいっか。別に未練もねーし」


女神が杖を振ると、俺の前にホログラムみたいな画面が現れた。


見た目・年齢・パラメーター......


選択できる項目がめちゃくちゃ多いな。

見た目だけでも細かいところまでいじれる。

最新ゲームのキャラクリかよ?

これだけで下手すると数時間かかるんじゃあ____


……まあじっくりやるか。


どうせなら完璧な状態で次の人生始めたいし。


「因みに、制限時間は5分です」


「はぁ!?5分?5分で全部決めろってか!?」


「はい。因みにあと4分です」


「将棋の早指しかよ!!」


おいおいふざけんな!

やべ〜急がね〜と!


「髪は黒にしてサラッとミディアムヘアに。目元は切れ長な感じで、って少し目つきが悪いように見えるな。ってかこれよく見たら......身なり整えた素の俺だよな!?」

「服装は黒いフード付きのローブか。なんかちょっと根暗な感じに見えるからもっと他の......」


「残り1分15秒」


「あ〜もういい!次だ次!」


年齢も選べるのか?デフォルトが20歳になってるな?

今の俺と同じか。


「どうせなら、0才から……ってあれ?動かせね〜ぞ?」


「あ、すみません。どうやらシステムエラーのようですね」


「はぁ!?ふざけんな!!ヤバイ、時間がない!」

「え〜っと、前世の記憶は残すか……これはYesだな」

「それから……」


「残り30秒」


「さんじゅ〜!? くそ〜! 取り敢えず一番大事なのはパラメーターだ!さっさとパラメーターの欄を……」


ん?


あれ、選択できない。


「すみません。どうやら」


「エラーなんだろぉぉぉ!!???なんなんだよもぅぅぅ!!!」


「はい。ですが安心してください。選択ができなかった項目は自動でちゃんと振り分けられますから」


「くそ……結局運ゲ〜じゃねぇか」


パラメーター選びは間違いなく一番重要な部分だ。

どんなゲームだってそう。ここでミスると後々になって響いてくるんだ。


しかも……今回はゲームじゃない。


____特に一番気になったのはこの項目。


「ユニークスキル」


おそらく何か特別な恩恵を授かれるんだろうが……


「はぁ......せめてユニークスキルだけでも選びたかった……」


「あ、それならご安心ください。ユニークスキルに関しては元々ご自身では選べないんですよ」


「え?そうなの?」


「はい。ユニークスキルは、"生前に最も強く願ったもの"が自動的に反映されます」


「俺が……願ったもの?」


「はい。あ、そろそろお時間のようですね。最後に、質問はございますか?」


「いや!急に質問て言われたって……あ!俺みたいな転生者って他にもいるのか?」


「はい。異世界からの転生者は”2名”までとなっています」


2名……つまり、俺の他にもう1人。


どんな奴なんだろう。


「では、お時間となります......良い異世界ライフを」


「え!?もう本当に行くの!!?」


「はい、そ、それでは...ご...機嫌......よう」


くそ......急に眠気が......


いったい......なん......


・・・ーーー・・・ーーー


「た......のみ......まし......た......よ......ザザァ......」

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