文殊は反省しない。素直にならない。謝罪の言葉も形だけで熱がない。
それなのに確かに少しだけ、変わっている。成長の物語だけど、その構造が徹底的に隠されている。
彼女の変化が作為的に見えないのは、牛一という人物の機能が絶妙だからだ。彼は説教しない。ただそこにいて、戸惑い踏みとどまる。それが文殊の隣に置かれることで、読者は二人の距離が縮まる瞬間を、気づかないうちに体験している。
また文体のリズムが非常に良い。
短文の連打で場面を刻み、静寂と暴力を交互に置く。特に戦場描写は情報を削ることで逆に緊張感が増す書き方になっており、映像的にしっかりしている。
本作の最大の魅力は、圧倒的な武力を持つ主人公を「どう制御し、どう人間にしていくか」という信長公の視点(荒療治)が軸にあることです。
特に舌を巻いたのは兵糧調達のくだり。林通勝から米を騙し取って「やった!」と思いきや、信長様から「それは織田家の中で米を移動させただけで総量が増えていない!」と一喝されるシーン。ただのチート無双ではなく、当時の経済観念や為政者のロジックがしっかり組み込まれていて、作者様の歴史への深い造詣と構成力に唸らされました。(。-`ω-)✨
牛一という常識人を「薬」として配置する采配も見事で、文殊が今後どのように「痛み」や「心」を学んでいくのか、その心理描写の解像度の高さに圧倒されています!