進展

深青色の空が時間とともに赤みを帯びていく。朝が来た。


眠りから覚めると、ベットの上ではなかった。それは昨日の記憶が、僕が見た夢ではないということを示していた。

『本日のニュースです。昨夜未明、原因不明のエネルギー不足により本日の気象操作が行えず、曇りとなる模様です。約40年ぶりに気象操作のない一日になりそうです。』

彼女がテレビを見ているようだ。気象操作がない自然そのままの天気が味わえるなんてなんとも幸運なことだ。

僕が見ていることに気が付いたのか、こちらを向いて質問を投げかけてきた。

「ねえ、この気象操作って何のこと?」

「それは、読んで文字のとうりこの国の気象を操作して好きな天気にする技術だよ。これによって台風や大雨による被害がなくなったんだ。」

彼女は驚きすぎて声も出せないようだ。

「でも今日は、国に天気が操られていない。」

珍しいことで興奮気味になってしまった。

「なんでそんなにうれしそうなの?」

彼女にはなぜここまで喜ぶのか分からないらしい。

「そりゃあもちろん、自由な天気になったからだ。」

「自由な?」

「この世界は少なすぎる人を補うためにいろんなことを制限しているのさ。天気も、子供の住むところも。」

僕とは全く違う世界から来た彼女にはわからないことなのだろう。

「あなたも大変なのね。」

「いろいろとね。まあいい、とりあえず教授のところに向かおう。」




我が家から少しの間移動をすると、教授の研究所が見えてくる。真っ白な建造物がそこにある。周りと色合いが一切あっていないが、教授の要望でこんな色になったらしい。

インターホンを押すと、すぐに教授がでた。

『ひさしぶり。珍しいね、君からくるだなんて。』

「教授、お久しぶりです。実は折り入ってお話があるのですが。」

『わかった、とりあえず中に入っておいで。』


研究所に入ると、様々なものが所狭しと置いてある。まったく意味のなさそうなものから、逆に何かわからないものまで多種多様だ。実際、教授は何でもかんでも目についたものを研究してしまう悪癖がある。専門でもないのに、だ。

教授は部屋の中でどっしりと深く椅子に座りながら待っていてくれた。

「おや?後ろの彼女は?」

すぐに質問を投げかけてきた。

「そのことで話があるのです。実は…」

ことの詳細を事細かに説明した。


「ふーむ、わからん!」

「ええ、教授ならいけると思ったんですが。」

「とりあえずこちらでも調べてみるから。おそらく、君の考えるようにパラレルワールドから来た可能性が高いけどね。」

「まあ、今日のところは帰りたまえ、何かわかったら連絡するから。」

「「よろしくおねがいします。」」

「あの、質問があるのですが。」

彼女が聞いた。

「私は、元の世界に帰れるのでしょうか?」

「わからん!!」

「しかしね、一度こちらに来たということは帰れる可能性も0じゃない。何と言ったって君という実例があるのだから。」

彼女はしばらく黙った後、しばらく教授と話をしていた。自分も話に混ざり長い間話をしていた。





家に帰ると、暗くなっている時間だった。空がオレンジとクリーム色を混ぜたような色へと変わっていった。

「結局よくわからなかったわね。」

「でも、大人を頼るということも大切なことだよ。僕らだけじゃわからないことも多いからね。」

「そうね。」

そのまま、夕食を食べて体をきれいにして眠りに入ろうという時だった。

ドン!ドン!ドン!

扉が打ち鳴らされる音がした。

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