預言者は羊の夢を見る
Zamta_Dall_yegna
1.予言者の悩み
あるところに、予言者の男がいた。彼は、厚手のローブを纏い、腕には目のような宝石をいくつもあしらった腕輪をつけている。占い師のような見た目の人物だ。瞑想をすることによって未来を見ることができる彼はそれを仕事にしていた。見た内容に応じて、伝えるにふさわしい人物に会って未来に起る出来事を教えて金を貰っていたのだ。
彼はここ最近、スランプに陥っていた。いくら瞑想をしても未来が見えなくなっていたのだ。安眠用の薬を煎じて飲んでも気が晴れず、家具の配置を変えても何も見えずに途方に暮れていた。
予言者は気分転換をすることにした。安眠用の枕として、羊の綿で出来た枕をしようし、睡眠薬を飲んでぐっすりと眠りについたのだ。
目を覚ますと、予言者は羊になっていた。晴れ渡る空に、緑の草木がなびき、サラサラと音を立てていた。予言者は自分が羊になっていることは気にもせず、草原を駆け巡った。風を切って走ると、草や木々の優しい匂いが流れてくる。彼は気分がよくなって、近くにあった草木をむさぼった。うまいうまいと食べて満足すると、木陰で横になった。そして、彼はひと眠りしようとして、ふと疑問が湧いてきた。
―なぜ俺は、メェメェと鳴いているのだろう―
カーテンから差し込む光に目が覚めた。どうやら先程の内容は夢だった、と予言者は気づいた。あまりにも現実味があるものだったので、一瞬気づかなかったがそれ以外に考えられないものだった。
あれほど変わった夢を見たのなら、再び未来が見えるのではないかと考えた彼は瞑想を始めた。だが、視界には真っ暗な闇が広がるばかりで、スランプは治らなかった。彼は落ち込んだが、スランプだから夢の中で羊になったのだと言い聞かせて立ち直る方法を考えた。
その日もまた、羊になる夢を見ていた。彼は羊になったことを理解していたので、草原中を駆け回り、水辺を探した。川のせせらぎが聞こえてくると、彼はそちらへ行って水面を覗いた。そこには黒い顔に白い綿を全身に纏った羊がいた。彼はその姿を確認すると、瞑想を始めた。体が違う今、瞑想を行えば未来が見えると思ったのだろう。だが、やはり見えることはなかった。彼の体は、先程散々駆け回ったせいで、おなかがすいていた。彼は、心も羊に近づいてきてしまったのでは?と不安になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます