第2話 そうだ僕はクズだったんだ……
《乙女達は男装乙女に恋をします》の悪役シン・セイフライドは生来のクズだ。
エロいゲーム世界『アリスフィア』では
各ルートのヒロイン達への強姦や凌辱。
闇ギルドへと密売や売春等々数えたらきりがない程のクズの悪役令息だった。
その残忍な性格は幼少期からのものだった様で。
さっきまでいた森でもアレクシアを1人置いてその場から逃げるんだ。
そして、その出来事で男性不信+男嫌いに
「………そうか。僕ってそんなにクズだったのか」
アレクシアと居た森の中で突然現れたゴブリンに脳天を叩かれ一瞬だけど気絶してしまった。
そして、その一瞬の気絶により
「さっきはあまりの突然の出来事で
さっきまで前世の記憶と現世の今の記憶が混ざり合って頭の中が
そして、現在の
そして、この産まれて6年というたったの短い年数で。悪戯っ子、悪童、クソガキなんて影で言われる程周囲には嫌われる様な事を日頃からしていたみたい。
「……そりゃあ普段からあれだけ悪さをしていればアレクシアに成敗されるわ。何でここで働いてたメイドさんに笑いながら焼きガエル食わせてるんだ僕? アホの子なのか?」
想像以上にシン・セイフライドという人物は終わっている。
いや。待て待て。シン・セイフライドの性格が歪んでいるのにもちゃんと理由はある。
それもこれもセイフライド家の家督を継ぐ長男のサギールが優秀で両親はサギールの事しか可愛がっていなかったのが原因だ。
そのせいでシンは何もかもやる気を失い周囲に悪さを働く様になっていくとコンプリートガイドの裏設定には書いてあった。
「……顔は悪くないんだけどね。ムカつく程の美少年だし。自分の顔だけどさ……前世の頃もこれくらいの美少年だったらモテてたかな?」
止めよう。比較しても心が傷付くだけだ。今はいかにして
「今の年齢は6歳。この世界で生きていくにはまだまだ厳しい
ゲームだと世界の時代設定は中世時代辺りだった。
エロい百合ゲーのくせに魔法も剣もモンスターも盗賊も何でもありの世界の治安が終わってる世界なんだよこの世界……6歳でどう生きろっちゅうの。
7歳になればアレクシアや《乙女達は男装乙女に恋をします》の可愛いヒロイン達が集う。アリス魔法学園へと僕も強制的に入学させられる事になる。僕の兄サギールの提案で。
たしかコンプリートガイドの設定だと長男サギールは
そして、魔法や剣術の勉強を
アレクシアや可愛いヒロイン達の魔法の才能に嫉妬し。ひねくれた性格が更に
まあ、
……まぁ、今更兄さんが僕の悪口を言って様が関係ないけどね。
だってある程度の歳になったら逃げて行方を眩ませる
いや~しかし1年後にはアリス魔法学園に強制入学……時間無さすぎでしょう。
でも入学する前にこの屋敷から家出して身を隠さないとアレクシアやヒロイン達に何をされるか分からないし……その破滅を回避する為にも入学前の約一年の間に自身の剣と魔法の腕を磨くのが得策だよね。
「どうせ。僕のこれまでの態度と兄さんから風評被害で僕の相手なんて皆したがらないしね。ていうか今現在も書庫でこの世界の事を調べているっていうのにメイドさんの1人もお付きじゃないってどういう事? 一応僕って公爵家の次男って設定だよね?」
これが普段からの行いってやつだね。そりゃあ日常的に使用人の人達に罵声や悪態をつきながら
「やっぱり読めるね。アリスフィアの世界の文字は基本的ローマ字似た表記で書かれているから前世の記憶があれば難しい本でも何とか読めそうだ。これでこの世界の知識は学べるとして……問題は魔法と剣術」
魔法は両親にねだって家庭教師でも付けてもらえば良いや。
それよりも先ずは剣術かな。生前は武道派の家族のせいで色々な武術や武器の扱いも習ってはいるけど。
この世界での剣術はからっきしだしね。誰かに師事して教えてもらわないと駄目なんだ。
たしかコンプリートガイドの設定資料集には………
「このセイフライド家の執事長のオーフェンさんはリゲイン王国の元聖騎士……剣術を教わるのにこれ程適した人はいないよ。土下座してでも剣術の稽古をしてもらわなくちゃっ………」
◇
《セイフライド家 裏の庭園》
「オーフェンさん。今までクソ生意気な態度を取ってしまい申し訳ありませんでした。心を入れ換えますので僕に剣術を一から叩き込んで下さい」
「シン御坊っちゃま?! どうなされたのですか?」
書庫を後にした後、オーフェンさんに地面に頭を付けて土下座した。
「宿敵に殺されたくないんです。死亡フラグを回避したいんです。その為には生き残る
「お、お顔をお上げ下さいシン御坊っちゃま。セイフライド家の御方がそんな簡単に頭を下げるなどあってはならない事です」
いや。死ぬよりはマシです。強制入学までの
「オーフェンさん。貴方の剣を学びたいです。かつて王国の剣鬼と言われた貴方の剣術を」
「……シン御坊っちゃま。誰からそんな話を?」
「へ? ああ、書庫の王国記録書でこの間見たんだ。色々載ってて面白い本だったよ」
まぁ、嘘だけどね。コンプリートガイド。オーフェン・ゼレクトラのプロフィールの欄にそう記載されてたのを覚えていたげさ。
「ほう。あの暗号で書かれた王国記録書を読み解いたのですか?」
「ん? うん。なんとなくね。それよりも剣術教えてくれません?」
僕は再び地面に頭を付けて土下座した。
「(メイド見習いのレイラ言っていた様に。先日アレクシア様と森からお帰りになってからまるで別人の様に変わられている。シン御坊っちゃまにいったい何があったというんだろうか?)……シン御坊っちゃまが頭まで御下げになったのならば。このオーフェン。教えないわけにはいきませんね」
「良いんですか?」
マジ? 《乙女達は男装乙女に恋をします》の伝説の剣士のオーフェン・ゼレクトラ直々に剣術を教えてもらえる?
「手加減は致しませんがよろしいですかな?」
「う、うん。時間も惜しいし今から始めようっ! 直ぐに始めよう。オーフェンさん。僕死にたくないからね」
「死にたくないですか? 公爵家のご子息であられるシン様に手を出せる者など王族以外いないと思われますが」
いやいや。沢山入るじゃん各ルートで僕が迷惑かけた人達に槍でいっぱい刺されて殺されるイベントありましたやん。
そのルートの最後にアレクシアに首チョンパされてましたやん。
「話はここら辺にして稽古を始めようよ。オーフェンさん。はい。木の棒」
「おっと。ありがとうございます……(あの
「いくよっ!」
「ほう。構えは上々………いえ。剣術の基礎はもう出来ている?」
バキンッ!
こうして僕は
◇
《1ヶ月後》
バキンッ……バリバリッ!
「魔法を剣に纏わすとは。魔法の授業も順調の様ですな。シン様」
「うん。これもオーフェンさんとシンシア先生の指導のお陰だよ。ありがとう」
剣の稽古を始めて早くも1ヶ月が経過した。オーフェンさんの的確な指導もあり。剣術の腕もメキメキ上がって来ているよ。
これも前世の記憶が戻って武術の知識が頭にあるからだね。生前から鍛練は怠らない事だね。偉いよ。僕。
ていうか。この
いや設定資料集には才能の塊とかと小さく詳記されたけどさ。
「良いね。良いね……これでもっと魔法も剣術も上達すれば外の世界に飛び出しても何とかやっていけそうだね」
それに1ヶ月前の森の一件で
次に会うのは最悪11ヶ月に強制入学させられるかもしれないアリス魔法学園。
「このまま。1度も会わずにフェードアウトして辺境の地でスローライフでもして一生を過ごそうかな……良いね。良いね。夢が広がる。レッツ死亡フラグッ! アレクシア。君とはこのまま一生会わないで……」
僕が未来の平和な自分に酔いしれている時、僕の専属メイドになったばかりのレイラちゃんが息を切らせながら走って来た。
「シン様~!! お稽古中申し訳ありません」
「レイラちゃん? 息を上がってるよ。はい。水飲みな」
僕は水が入ったポットをコップに注ぎレイラちゃんに手渡した。親切が一番。不親切駄目絶体。
死んじゃうからね。
「あ、ありがとうございます……で、ではありません。シン様。アレクシア様が是非シン様にお会いしたいといらっしゃいました。どうなさいますか?」
「はい?
約一年後に会うかもしれない僕の死亡フラグが望んで無いのに立ちやがったよ……
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