カニカマリアは星を繋ぐ 〜宇宙を渡る練り物外交官の日常〜

星空モチ

第1章:カニカマ姫、地球でバイトする

🐟💨


私の名はカニカマリア。

こうして日本の練り物工場で、カニカマを黙々と検品する日々を送っている。

見た目は、そうね、地球の言葉で言うところの「美人」とでも言えばいいのかしら?


🦀✨


透明感のある白い肌は、まるで茹でる前の最高級カニカマ。陽の光を浴びれば、その繊維一本一本が輝くように見えるらしい。そして、毛先に向かって鮮やかな赤色に染まっていくグラデーションのロングヘアは、まるでカニカマの赤身そのもの。時折、地球の子供たちが「わぁ、カニカマ色の髪だ!」と指差すのも、私にとっては褒め言葉だ。


👁️‍🗨️


瞳は、カニカマの繊維の奥から覗くような、深みのある琥珀色。地球の人間は私の目を見ると「どこか神秘的で吸い込まれそう」と言うけれど、それは多分、私の瞳の奥に広がる宇宙の記憶が、無意識に彼らを引き寄せるからだろう。私自身は、それが何であるか明確には知らないけれど。


💫


「カニカマ姫」なんて大層な名前をつけられたけれど、こう見えても地球での生活は案外、地味で堅実なものだ。この小さな練り物工場、「練り物工房・海鮮の匠」の薄暗い一角で、私は今日もひたすらカニカマと向き合う。漂う磯の香りと、どこか甘い魚肉の匂い。この匂いが、私の魂を落ち着かせるのだ。


🏭🌊


工場は、駅から少し離れた寂れた商店街の裏路地にある。築何年かも分からないオンボロの建物だが、中に入れば活気はある。特に、社長の魚河岸一郎(うおがしいちろう)の声は、工場中に響き渡る。彼は、いつも作業着が油まみれで、頭は寝癖でぐしゃぐしゃ。だけど、その琥珀色の瞳の奥には、どこか子供のような好奇心と、練り物への異常なまでの情熱が宿っている。


👨‍🍳🔥


「カニカマリアちゃん!今日のカニカマ、最高の出来だぞ!繊維のほぐれ具合、完璧だ!」


一郎社長は、そう言って目をキラキラさせる。彼は私の秘密を唯一知る地球人――いや、正確には「隠れカニカマ星人マニア」だ。私が感情が高ぶると「カニカマカマ!」とカニカマ語を話したり、カニカマを食べると宇宙の情報が頭に流れ込むことを、彼は熱心に記録している。


📝👽


彼のその好奇心と探究心が、私が地球で生きていく上で、どれほど助けになったか分からない。私にとっては、単なる故郷への帰還手段でしかなかったカニカマが、彼にとっては「宇宙の真理」を解き明かす鍵なのだ。彼は、私の「カニカマ語」を熱心に翻訳しようと試みる日々で、常にノートとペンを携帯している。


🗣️📖


今日もまた、流れ作業でカニカマを検品する。一本、また一本。完璧なカニカマは、私にとって故郷の記憶を蘇らせる大切な情報源。地球のカニカマは、故郷の「超高密度カニカマ」とは比べ物にならないほど低密度だけれど、それでも、かすかな情報が流れ込んでくる。


🌌✨


今日のカニカマは、少し違っていた。


手に取った瞬間、電流が走ったような感覚に襲われた。

「カニカマッ……!?」


⚡️


そのカニカマは、他のものとは異なる微弱なエネルギーを放っていた。まるで、遠い宇宙から送られてきた信号のように、私の脳裏に直接、ある図形が浮かび上がったのだ。それは、私がずっと探し求めていた、故郷への帰還船「カニカマ号」の設計図に酷似していた。


🛸🗺️


まさか、地球の練り物工場で、失われたはずの設計図の欠片を見つけるとは。このカニカマは、ただの食材ではない。それは、私を故郷へ導く、唯一無二の鍵なのだ。そして、この設計図を狙う何者かの存在も、このカニカマを通して予感させられた。


🤫


「カニカマリアちゃん、どうした?顔色悪いぞ?」


一郎社長の心配そうな声が聞こえる。私は、動揺を悟られぬよう、精一杯の笑顔を作った。

「いえ、なんでもありませんわ、社長。ただ、このカニカマ、とびきり美味しそうで…」


😋


私の右手には、微かに輝く一本のカニカマ。そして、その中に隠された、宇宙の真理が。この一本のカニカマが、地球と宇宙を股にかける、壮大な練り物アドベンチャーの始まりになることを、この時の私はまだ知る由もなかった。

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