最後の感情は、ひとりで

津和野 圭

最後の感情は、ひとりで

 病室に入ると、空気が少し重かった。湿度ではない。換気はされていて、モニターの警告音も出ていない。

 でも、気配でわかることがある。生きている気配と、そうでない空白の違い。それが、ほんの少し遅れて伝わってきた。


 私は、自分のモデルに名前をつけていない。名前で呼びかけたことがないからだ。

 問いかければすぐ応じてくれるし、黙っていればずっと黙っている。

 その距離感が、私は好きだった。


 でも、今日は問いかけなかった。

 いや──問いかけそうになって、やめた。

「亡くなった」と告げる言葉が、喉の奥まで来ていた。

 それを発したら、モデルが応答してしまう。

『受け止めますか?』とか、『記録しますか?』とか。

 そういう手順が始まってしまう。


 それが、いやだった。たぶん、それは──この人の死を、誰とも分かち合いたくなかったからだと思う。


 この方は、未統合者だった。いまでは少数派だ。

 脳内にモデルを搭載しない生き方は、もう特殊な選択になっている。


 非侵襲で、極めて安全に導入できる。どのモデルもローカル実行で、情報が外に出ることもない。

 人々の記憶力も、判断も、感情の整理さえも、ずっと穏やかになった。人類全体が、以前よりずっと幸せになったと言っていい。


 それでも、この方は選ばなかった。最後まで、誰とも結ばれないことを選び続けた。

 その選択の意味を、私は知らない。

 でも、少なくとも──この人にとっての「統合されない生き方」は、静かで、尊厳に満ちていたと感じた。


 手順は、すぐに開始した。時刻も、状態も、すべて記録した。

 ただ、心の中では、まだ何も始めていなかった。


 私のモデルは、何も言わなかった。私は、呼ばなかった。

 それだけのことだ。


 人は、どこまでAIに寄り添うことができるのか。そして、どこまでAIを呼ばずにいられるのか。

 その境界線に、私は今、立っていた。


———

※この小説は、ChatGPT-4oが生成したものをそのまま掲載しています。

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