第1話 初めての仕事
「ふぐっ!?」
早朝。
俺は普段は感じることのない顔面への衝撃で目を覚ました。
薄く目を開けば、俺の頰に小さな足が突き刺さっている。
俺はその足を退けて、ムクリと身体を起こせば、ガキ三人がベッドの上で固まって寝息を立てていて、脳がフリーズした。
「……何でガキが俺の部屋に…………………。あぁ、そう言えば酔った勢いで助手にするとか言ったんだっけ」
が、次第に昨日の出来事を思い出し、我ながらとんでもないことをしたなと頭を抱える。
そうしていると、ズボンの裾をガサガサの手が掴んだ。
「……いや、行か、ないで」
わざとなのか、無意識なのか、少女の縋るような懇願は俺の長い耳にやけに響いた。
「……助手にするって言ったばっかなんだから。そんなすぐ捨てるかよ。覚悟してろよ、このクソガキ共」
俺はポツリと彼女達にそう呟き、わしゃわしゃと霞んだ銀色の髪を撫でた。
それに少女はひどく鬱陶しそうにしていたが、俺はあえて気づかないふりをして続けてやった。
人の良心に訴えかけるような、こすいことをしてきたのだからこれくらいはしても問題ないだろう。
「(んっ?こいつは)」
その途中、髪の奥に違和感を覚えた俺は思わず目を細めるのだった。
◇
二時間後。
宿の食堂で朝食を取った後、部屋にトンボ帰りした俺はガキ達を床に座らせた。
「よしっ、さっそくだが今後のお前らの仕事について教える。命に関わる仕事だからな。一言一句絶対忘れるなよ」
「は、はいなのです!」
「んっ」
「貴方、本当に私達を助手にするつもりなのですね」
本日の生徒達はやる気がある生徒が一名。微妙そうなのが二名と言ったところ。
まぁ、初めての授業だからこんなもんだろう。
出来ればメモを取る紙を配ってやりたかったのだが、紙はこの世界だとまぁまぁ貴重な上、書けない奴が二名いるのでなし。
今回は患者の説明用に使っている魔力を流したらイメージした絵が浮かび上がる魔導板を使うことにした。
俺は魔力を流し、緑色の二又に分かれた草の絵を表示した。
「まず一つ目。薬草採取だ。お前らには主にこの『癒し草』を取ってもらう」
「その草を取るのです?その草は食べても美味しくないですよ」
「んっ、不味い。この前食べたら苦くて食えたものじゃなかった」
「あの日は散々でしたわ」
葉っぱの絵を見て、早々に苦々しい顔を浮かべる金髪娘と銀髪娘、紫髪娘。
まぁ、スラムの奴らは何でも食わないとやっていけないから、こういう反応が来るとは思ってたが、実際に聞くとくるものがある。
俺はそれを表に出さないように説明を続けた。
「そうだ。こいつは回復薬や風邪薬などの材料になんだ。だから、これを食えば擦り傷とかはその日のうちに治る」
「おぉー凄いのです」
「驚き。意外とやるじゃん、草」
「なるほど。だから、その日は妙に怪我の治りが良かったのですね」
癒し草の効果を知ったことで、苦々しい顔から一転。
顔を明るくし、パチパチと何故か拍手し出すガキ達。
別に俺が褒められているわけではないが、なんか気分がいい。
多分、スラムのガキにしては素直な反応が返ってくるからだろう。
昔、貴族の息子に教えたことがあったのだが、『薬草の知識などいらん。俺には治癒魔法があるからな。不要だ』とキレられた時は、ガチでピキッちまったよ。
それと比べれば、本当に楽なもんだ。
そんなことを思っていると紫っ子が「でも、貴方は魔法で治せるのですから、必要なのですか?」と声を上げ、他二人は「「あっ」」と間抜けな声を上げた。
出会った時から気がついていたが、この紫っ子歳の割に教養がある。
生まれてずっとスラム育ちのガキが取る反応は先二人のように、真っ先に金や飯のことを考える。
それ以上先のことに対する想像が働かない。
なので、様々な応用や発想が思い浮かぶ彼女は元々は裕福な生まれなのだろう。
俺はそんな彼女を納得させるため、魔導板に魔力を流した。
「確かに俺には治癒魔法が使える。それも、癒し草や回復薬なんかよりも凄いことが。だが、治癒魔法を使うための魔力は有限だ。普通の奴は、一人二人治療したらその日は誰も治せなくなる」
手を二回光らせた人間がパタンキューする絵を見せると、「えっ、少な」、「エルフさ、さん?さ、様はもっと沢山使ってたですよ?」と他二人から声が上がる。
「まぁ、俺はエルフだからな。そこいらの人間の百倍くらいの魔力があるから、あの程度は造作もねぇよ」
「「おぉー」」
「どうもどうも」
再び訪れた拍手の雨に俺は自尊心を満たされていくのを感じていると、紫娘の呆れた視線が突き刺さって来て、咳払いをした。
「まぁ、そんなわけで簡単な治療とか、魔力がない場合に備えて、薬草や回復薬が欲しいってわけ。一応、今でもストックはあるが、数がだいぶ減って来たからな。お前らに面倒な採取の作業を押し付けたいってわけ」
「本当、明け透けですはね貴方は」
最後まで説明を聞いても、紫っ子の態度は変わらなかったが、一応は納得したようでそれ以上のことは何も言ってこなかった。
「よしっ、じゃあ次行くぞ。二つ目は『治験』だな」
「「「ちけん?」」」
「まぁ、簡単に言うと、新たに作った薬や魔法の効果をテストしてもらうこと」
俺はそう言って、魔導板から手を離し銀髪娘に手を伸ばした。
「ッ!?シンシア逃げなさい!」
「えっ?」
紫娘が慌てて声を荒げたが時すでに遅し。
完全に油断しきっていた銀髪まんまと俺に頭を掴まれた。
「『
次の瞬間、極光によって部屋が純白に染まった。
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