第22話
翌朝から、直美とリム=ザップはジャンクヤード巡りを開始し、グリムリーパーに使える部品を探し回った。リム=ザップはジャンクヤードでは有名人なのか、多くの店員たちに声を掛けられていた。時には店員から技術的な相談を持ちけてくることもあった。
直美とリム=ザップはジャンクヤードに店を構えているジャンク屋を覗いて回り、必要な部品を次々と購入して、借りているドックに搬送してもらえるように手続きをしていく。その後ろをカシアがブツブツとお金の計算をしながら付いて来る。
何件目かの店を見ている時、あまり人相が良いとは言い難い人が、カシアに声をかけて来るのが見えた。
直美は、気にはなったが、どう見ても子供にしか見えない自分が首を突っ込むことでは無いだろうと思い、そのまま、リム=ザップと部品を探していく。
「結局、エンジン回りはゴッソリと交換するようになったね」
「ああ……古すぎて……交換部品が無い……でも、性能は上がる」
「うん、そうだね。VA-399-Σ3“ペイルスター”なら出力は大幅アップだね。軽巡で乗っけている船ってあるのかな。ノーマルの巡洋艦どころか重巡クラスのエンジンだよね」
「普通は無い……魔力が足りない……直美、重巡クラスの魔力」
「あ、そうそう。その魔力って、どうなってるのかなって思ってたんだ……戦艦とかも一人の魔力で賄っているの?」
直美とリム=ザップが話していると、カシアが戻ってきて会話に参加した。
「あー、それでは、その辺が私の方から説明しましょう」
直美が頷くとカシアが船のクラスと魔力について説明をしてくれた。簡単に言うと、通常の軍艦になると、一人の魔力だけで補う事は難しく複数人で対応しているようだ。特に魔力が高い者は戦艦など大型艦の乗組員として配属されることが多いそうだ。
そんな中、たった一人で軽巡クラスとは言え動かしていた直美はかなり特異な事だと教えてもらった。
「ふぇーそうだったんですね。あ、アビスは何人で動かしているんですか?」
「そうですね。アビスは通常は三人で戦闘時は四人態勢になっていますかね。魔力供給担当は全部で六人乗っていて交代制で賄っています」
そんな話をしながら、買い物を終えて、簡易ドックに戻って来た。
「おお、三人とも帰って来たか。カシア、金は大丈夫だったか?」
バロックがお出迎えしてくれた
「ハイと言ってよいのか。結局、中古の駆逐艦が買えるぐらいにはなってしまいましたね」
「ゲェ、そんなにしたのかよ。かぁーーメインエンジンと補助エンジンを台座ごと丸ごと交換で、砲塔が二セット、装甲全面か。まあ、頭脳以外は、ほぼ全とっかえだからな。しょうがねぇか」
「それより、艦長、妙な話を聞いたのですが、最近アンガーシアが消息を断っているようですよ」
カシアさんが、深刻そうにバロックと話を始めた。ジャンク屋で出会った人相の悪い人から聞いた話をしているようだった。
「さぁ、明日には荷物が来るから、今日の内にエンジンや装甲パネルを外しておきたいな」
「俺と……うちの整備員たちが手伝う……みんなで取り掛かろう」
リム=ザップが十人ほどの整備員を連れて来てくれた。皆、アビスの乗組員だ。
「皆さん、ありがとうございます!! よろしくお願いします」
「おう、お嬢ちゃんは小さいのにえらいねー……えっ! これの艦長さん!?」
直美が艦長だとは知らなかったようだが、誤解も融けて、皆で作業に取り掛かった。
簡易ドックは金属性のフレームが六角形に組まれており、その姿は蜂の巣のように並んでいた。そのフレームのあいだを半透明のビニールのようなもので覆って気密性を保っている。中から見ると大きなバルーンの中に入っているように思える。
そのフレームに沿って走行するアームや溶接機が取り付けられており、それらは自動で動いて、破損した装甲パネルを剥がして、取り除いていく。
「凄い、修理作業が自動で動いている。あ、主砲も外されて運ばれて……へぇー便利だな」
「外部はな……でも内部は……自分たちで。俺……装甲が歪んで取れないとこ……直美はエンジンを」
そう言うと、リム=ザップは大型のペンチのような工具を持って、装甲パネルの方に飛んで行った。
「はぁ、アームでは取れなくなっている部分を、無理やりはがすのか、歪みを治すのかな。おっと、それどころでは無いや。私もエンジンをばらさないと」
機関室に入ると、複数の整備員たちが居て、壊れた補助エンジンの解体を行っていた。直美も皆に混じって、台座と繋がっている留め具の取り外しを行っていく。
直美にとって、電動工具も手慣れた物になっていた。補助エンジン本体を外して、さらに船体のフレームと連結させている台座部分も外していく。ここまで外すと、本来は船体のフレームと内部の緩衝材が見えるはずが、そこからは、外の様子が見えた。
デスカリオンからの砲撃で装甲版と気密材、緩衝材をぶち抜いて穴が空いてしまっていた。
「あー、ここから補助エンジンを破壊して、さらに、その余波でメインエンジンまで壊してくれたんだな。ったく面倒な事してくれたね。この最後の一撃さえなかったら、逃げきれていたのに」
「艦長さんは、この軽巡一隻であのデカブツを中破させたんだってね。どんな魔法を使ったんだ。うちのアビスで中破までさせるには特攻でもやらんと無理かもな」
直美がブツブツと言っていると、一緒に作業していた整備員が声を掛けてくれる。軽巡一隻で帝国軍の艦隊を相手に戦って、なおかつ超巨大戦艦を中破までさせたという事で、一目置いてくれているようだった。
「おい、その事だがよぉ。さっき隣のドックの奴らに聞いたんだが、帝国軍の奴ら偵察ドローンを様々な航路に飛ばして、海賊狩りに力を入れているようだぞ。おそらく、この超巨大戦艦とやり合ったグリムリーパーを探しているんじゃないか」
「おいおい。じゃあ、この場所がバレるのも時間の問題かもしれんな」
「あれ? ここのルミナスチャートは帝国軍も持って無いって聞いたけど」
整備員たちの会話を聞いていて、不思議に思った直美が口を挟んだ。
「ああ、それはそうだったんだが、いつまでも大丈夫だとは思って居ないさ。それだけ、海賊狩りを強化してるんなら、誰か一人ぐらい裏切ってルミナスチャートを売り飛ばす奴が出てもおかしくは無いな」
整備員たちも、他の船の人たちと情報交換をしているようで、色々と聞いているようだった。
直美が、もし、ここに帝国軍が来たら皆はどうするのかと聞いてみると、皆の答えは“逃げるに限る”とのことだ。ならば、ジャンクヤードの人たちや、コロニーで働いている人たちは、どうなるのか思って聞いてみると、彼らも金目のものだけ持って逃げるそうだ。
ここは完全に海賊しか来ないコロニーだ。そうなると海賊相手に商売していることは隠しようがない。
その場合、海賊幇助という罪に問われるそうだ。それは簡単に言うと海賊たち、犯罪者の手伝いをしたことになるらしい。そのため、少々商品を失っても全員、逃げるそうだ。
「うわー。何だかいろんな人に迷惑かけちゃったな」
「いや、それは気にしなくても良いと思うぞ。もし、そんなことになったら、一番悪いのは、ルミナスチャートを渡した奴が一番悪いってこった。それは俺たちからしたらとんでもない裏切りだからな」
直美は、そんな会話を整備員たちとしながら、グリムリーパーからエンジンを取り外し、リム=ザップは外装は剥ぎ取り、気密材がむき出しの丸裸にしていった。
色々剥ぎ取られたグリムリーパーの姿は、まるで廃棄船のようだった。
「みなさーん。お疲れ様です。今日はここまでにします。明日は部品が到着するから朝から取り付け作業になりますので、明日もよろしくお願いします!」
「「オーー」」
直美が挨拶をすると、整備員の人たちもノリ良く返事してくれた。
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