校内SNS放送委員会─ただいま発信中
明香里
ゴミ箱が消失した!?
第一話
落ちこぼれた放送委員会
─これは、とある、おバカ男子3人と女の子がドタバタで送る学校ストーリー。
――昼休み。
私、
足も口も考えるスピードも速い。だけど、通知表の「落ち着き」は、毎回”がんばろう”。成績も悪くないし、勉強だって真面目にやっている。
そんな私だけど、なやみがある。そう、「委員会」だ。小学5年生になってから、気になっていた。今まで入ることなんてしなかったが、やってみてもいいかもって思うようになったんだ。
すると、私の担任の先生である
「あっ!春川さん!ちょっといいかな?」
正直、外で遊びたい私にとって、ひまではない。でも担任に呼び止められては仕方ない。
「はい、いいですよ。どうしたんですか?」
先生は、顔色をうかがうように聞いてきた。
「春川さんってまだ委員会に入ってなかったよね?」
嫌な予感がする。
「は、はい。入ってないですけど……?」
「あのね……実は放送委員会なんだけどね、男の子3人しかいなくて人手が足りないんだよね。よかったら春川さん、手伝ってもらえたらな……なんて。」
やっぱり。”放送委員会”は、ちょっと変わったメンバーがいる。男の子が3人だけ。担当の先生はいるものの管理が行き渡っていないどころか、先生が来ないらしい。
それに、みんなからは少し変わった目で見られている。
この前の放送だって、ザワつくような不思議なものだったもの。
――数日前
「……えー……マイクの調子が……あっ……いけますか……えっと……おはようございま……した?」
給食中の校内放送だ。え、だれ今の。しかも、声ちっさぁ!……「おはようございました?」って……なに?時間バグってるし!結局そのあとも、放送にトラブルでもあったのか、不調な様子が続き意味がわからないまま終わってしまった。もちろん、教室はザワつき「ゾンビみたいな放送だった」と言われるほど。
「すみませんが、私は入りません。無理です。」
「そこを…なんとか!!困ったことがあったら助けるから。ね?」
……ぐぬぬ。
先生の顔、本気で困ってる……。
こんなふうに頭を下げられて、それでも「ムリです〜」って突っぱねられるほど、私、冷たい子じゃない。
……それに……
(このまま誰もいなかったら、放送委員会って……どうなっちゃうんだろう?)
ボロボロのまま見て見ぬふりするのも、ちょっとモヤモヤする。
私、そういうの嫌いかも。
っていうか、私が入ったら少しは変わるんじゃない?って、なぜか思ってしまった。
(いやいやいや、なに自分に期待してんの!?)
と、心の中でツッコみながらも、もう口が勝手に動いていた。
「……分かりました!私が入ります。」
先生は、今にも泣き出しそうな顔をしながら、「ありがとう」と言った。先生から委員会入会の紙をもらい、丁寧に名前を書いていく。半分、気分が沈んではいるものの了解したからには、がんばらなくてはならない。
――――――――
――――
――
ひとまず、家へ帰り、これからどうしたものかと思いながら湯船につかる。お湯がぶくぶくと音を立てて空気が入る。いまさら考えていても仕方がない。
長くつかっていたせいか、お母さんの怒声がひびく。
「あかり!?いつまで入ってるの!?!?早く上がりなさい!!」
(やばっ!!忘れてた……ふぁ…ひとまず寝よう。)
お風呂からでて、自分の部屋のベットへと転がる。綺麗な月の光がカーテンをゆるく照らしていた。そして、不安になりながらも私は眠りについた。
─明日から忙しいことになるとは、この時は思ってもいなかった。
――翌日
「失礼します。」
朝、学校に登校し委員会の拠点となる放送室へ向かった。挨拶をしたものの、返事がないので入ることにしよう。
「……お前が、新人か!?!?!?」
─バタン。
私は、ドアを閉めた。無理だ。帰ろう。見るからに一線を引きたくなるような男の子が出迎えた。
すると閉めたドアが勢いよく音を立てて、また開いた。
─ドタッ!バタン!!ガラガラ!!
「おい、なんで閉めるんだよ、ばかやろう。」
「なんでって……」
言葉を返そうと思って顔を上げると、顔立ちの整った男の子が立っていた。一瞬、ドキリとした。だって、すごく綺麗な顔だったから。
って……そうじゃなくて!!
「と、とりあえず!あなたは?名前は?」
会ったことなんてもちろんないし、初対面なわけだから名前ぐらい聞いておかなくては。凛と光った目が私を見つめる。
「俺様か?名前は……
……えっ……お、俺様!?見た目はそんな感じが1ミリもない。すごく透き通った瞳に、オレンジが強い綺麗な茶髪だ。爽やかな感じがする青少年。
(主語が俺様なんだ……なんか残念なイケメンだ。)
渚と名乗った男の子は、こちらをマジマジと見つめてくる。なんだろうと思ったら、相手が先に口を開いた。
「で?」
「……はい?」
不機嫌そうな顔で聞いてくる。怒ってるのかな。
「”はい?”じゃないだろ!お前は誰なんだよ。名前。俺様だって知りたいんだからさ。言わないと呼べないし、分からん。」
はっとした。そうだった。私が誰なのか名乗ってなかった……。不機嫌そうな理由はこれか。すっかり忘れていた。
「まあいいや。とりあえず自己紹介は、入ってからにしてくれ。メンバーも紹介するし。来いよ。」
「は、はい……。」
ど、どんな人達なんだろうか。先生は
室内は思ったよりも広くて、静かだった。……というか、変な静けさがある。
壁にはマイクやスピーカー、ヘッドホン、スイッチのつまみがぎっしり並んでいて、まるでちっちゃなラジオ局みたい。
机の上には原稿の束や、カセットテープみたいな古い録音道具も置かれていた。何十年も前から使ってます、って顔をしてる。
ふと掲示板を見上げると──「放送委員会SNS、更新中!」の文字が手描きで貼られていた。
(え、SNS……?それ、放送委員会でやるやつなの?)
なんだか、機材のごちゃごちゃした感じと、SNSっていう現代感が変に混ざってて……へんな部屋だな。……聞くのは、後でにしよう。空きスペースにある、四角いテープルと椅子に2人の男の子が座っていた。
「おい、お前ら!新人が来たぜ。」
雑談で盛り上がっていた2人が、一斉にこちらに視線を向ける。1人はメガネをかけた真面目そうな子。もう1人は明らかに元気そうな子。
私は慌てて2人へと向き直り、自己紹介をした。
「初めまして。今日から新しく放送委員会に来た、春川明香里です。よろしくお願いします!」
最初は印象が大事だと言われるので、私はいつも自己紹介は元気にふるまっている。
2人はそれを聞いて、うなずいたり、顔を見合せたりと興味を示していた。
「こんちゃ!俺は、
見た感じは普通な男の子って感じだが、どこか力強いように見えた。
「わあ!!これが、オンナノコなん!?滅多に話さへんから、なんか新鮮やんなあ!……せや!忘れとったわ!ワイの名前は、
わぁ……眩しい。元気すぎる……この子。関西弁?……出身がその辺の人なのかな。とにかく元気だし、ぴょんぴょんしてる…………テンションが年中無休で上がり続けているタイプだな。
「放送委員会は俺様たち3人で活動してる。分からないことがあったら聞いてもらっていい。今日の活動は休みだから、テキトーにしていいぞ。」
「は、はい……」
(あ、この顔ぶれ……)
ここでようやく思い出した。
放送委員会のメンバーって、たしか学校で有名な──
校内3バカトリオ。
天野渚─方向音痴。どこにでも突っ込んでいく”俺様系”迷子男子。
宇敷裕太─メガネが特徴的。食べてるか、笑ってるか。給食3杯+弁当の食欲モンスター。
笠木雨晴─関西弁の元気印。でも、泣き虫で雨の日は休みがち。
って感じの、ツッコミどころしかない3人組。私はあまり、ウワサ話や、そういう類は聞かない主義だが……
こんな彼らとこれから、放送委員会で共にしなくてはならないのかと思うと憂鬱でしかない……とてもじゃないが馴染める気がしないのだ。問題児を私が、どうにかできるとでも思っているのか、何なのか。はやくも先生に助けを求めたい。
―――――――
――――
――
せっかくなので給食はクラスで受け取ったあと、私は放送室で食べることにした。基本食べる場所は教室と決まっている。だが、委員会に所属している人は自分たちの委員会室で食べることが多い。部屋に入るとあの3人も居て、先に食べていた。
「こっち座って一緒に、食べへん?」
「じゃあ、お言葉に甘えて失礼します!」
声をかけてきたのは、雨晴だ。おバカと言われるが、一見そうは見えない。
雨晴の隣座っていた、裕太くんに目をやると……
「はぇっ!?」
思わずでかい声が出てしまった。
彼は給食をおかわり分まで貰っていたのに、それプラス自分でお弁当を持ってきていた。この時点で既にびっくりだけど、何がまたおどろくかって?彼のお弁当箱が重箱だったからである。
(え!?……おせち料理でも入ってるの!?でっか!)
「ね、ねぇ……裕太くん……そんなに食べれるの?というかお腹破裂しないの?……お腹すいてるの?」
質問攻めみたいになってしまったけど、聞きたいことが山ほどある。他のふたりをキョロキョロと交互に見たもののスルー……というか慣れているらしい。
「え?このぐらい、俺にとっては普通っすよ?むしろ…明香里さん、少なすぎっすよ!もっと食べてください!」
─グイグイ、グリグリ
「むぐ……も、もう大丈夫だよ……!!」
「無理や無理!ワイらでもキツイんやから!!食べれへんて!!」
ガチャガチャ音を立てながら、騒がしく食べる。よく今までやってこれたな…放送委員会のみんな。恐ろしく感じてきた。
「お前ら!ちゃんと食べろよ!!じゃないと力つかねぇぞ!」
大きい声で話す渚くんの手元を見て、つい叫んだ。
「いやいや!あなたも、なに、デザートのプリンから先に食べてんのよ!!!」
「はぁ?食べ順なんて何でもいいだろ。細かいな。」
面倒くさそうな態度で、プリンを食べ進める渚くん。さらに残っている、おかずと、ピーマンが目に入る。
「ピーマン……食べないの?」
「うるせー……後で食べなくもない……」
なるほど。ピーマンが彼は苦手なのだな。だからといって、他のおかずも食べずプリンからは意味がわからない。
「はぁ……どうしようもない、バカね。」
「なんかいったっすか?」
「いいえ!なんにも!」
――――――
――――
――
「おい!ここにあった、ゴミ箱は!?!?」
教室に戻ると、ちょうど騒ぎの真っ最中だった。
「誰か持ってったんじゃないの?」
生徒たちが口々に騒いでいる。
見ると、いつもの教室の隅にあるはずのゴミ箱が、どこにもない。
(……え?なんで?)
教室のゴミ箱は、基本的に先生たちが中身を回収してくれる決まりだ。
だから、生徒が勝手に持ち出すのは禁止されてる。
でも、佐々木先生は今この教室にいるし……他の先生が来た様子もなかった。
─じゃあ……誰が……?
……つづく。
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