ベリショ

藤沢INQ

気分

 宇宙は、今日も音もなく膨張している。


 その果ての果て。誰の記憶にも記録にも載っていない、ある銀河の端っこで、私は、ただ浮かんでいた。小さな、ほんとうに小さな、星屑のひとつとして。


 通り過ぎてゆく彗星たちは、まるで社交界の貴族みたいに尻尾を振りながら騒がしく、恒星たちは自分の重さに酔いしれて、どこか哲学的に光を撒いていた。


 そんな中で私は、ただの塵だ。

 誰に名付けられることもなく、歌われることもなく、いくつかの素粒子と孤独だけを抱えて――でも、不思議と嫌じゃなかった。


 たまに、遠くの星の爆発音が、重力のさざ波に乗って届く。

 まるで誰かが笑ったような気がする。

 それだけで、今日も私は「ここにいる」と思える。


 私に名前はいらない。

 ただ、気分だけがある。

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