執愛 _しゅうあい_
kno
第1話 私の世界
執着、独占、束縛、盲愛
相手を縛る言葉はいろいろあるけど、私たちにはそれのどれもが当てはまる気がする。
「美陽さん......あのね、委員会のことで話しがあるんだけど...」
「......なに?」
「えっと......ごめんなさい」
またやってしまった。
昔からひどい人見知りでとても無愛想な態度をとってしまう。顔自体もきつい顔って思われてるんだろうな。
おかげで高校に入ってから半年は経つけど、いまだにクラスメイトとちゃんと話せた試しがない。
「じゃあここからはペアを組んで体操ー」
「しよしよ!」
「せんせー!ここ3人になってもいいですか?」
「せーっの!あっははは!」
はぁぁあ。ペアワークが1番つらい。
当然、そんな軽くペアを組んでくれる相手はいなくて、私は存在も薄いのか先生は気付いてくれない。
他に余ってる人はいないか辺りを見渡すけど、何グループかは3人で組んでいて、女子は偶数なはずなのに見事に余った。
「誰か組んでやれ」とかいう晒し者になる前にその場を離れた。
万が一声をかけられても「お腹痛い」でやり過ごせるようにグランドから離れていない校舎の影に移動する。
視線の先でみんながわいわい楽しくストレッチしてるのをほんのちょっとだけ羨ましく感じて眺める。
次こそはっと心の中で意気込んだその時
「あーサボりみっけ」
「また余ったのか、美陽」
「慎也、奏斗」
「ペアなんて適当にすればいいのに」
「そういう2人はいいよね。男子だから」
「そこはどうにもならないけど」
慎也はクスクスと笑いながら話す横で、私の頭を撫でながら奏斗が慰めてくれる。
「そういう2人は何してるの?授業中だよ」
「あの教師嫌い」
「同感」
「......卒業できなくなっても知らないよ」
私が少し呆れていると
「「その時は美陽も一緒な」」
ピィィ「集合!」
体育教師が笛を吹いてる
「戻るね」
「また昼休みな」
「頑張れ美陽」
キーンコーンカーンコーン...
「...うま!美陽、料理の腕上げたよな。
卵焼きとかすげぇ美味い」
「うん。おかずのレパートリーも増えてどれもすごく美味しい」
「ほんとっ!?よかったぁ。
またリクエストあったらいってね」
慎也は卵焼きとかシンプルなおかずが好き
ごぼうは大嫌い
奏斗はしその肉巻きとか手の込んだものが好き
トマトが大嫌い
2人のご飯を作っていく中で好物も嫌いなものもだんだんと把握してきてもう完璧。
美味しそうに食べてくれるその姿に毎日照れくさいながらもとても作りがいがある。
「今日の夜は!?」
「献立はもう決まってる?」
「うーん...ハンバーグとかどう?」
「「賛成!」」
「じゃあ2人とも放課後買い物付き合ってね」
午後の授業の開始のチャイムを聞いて、それぞれの教室に戻る。
_私の世界_
放課後
春先は一見昼間と変わらない景色に見えるけど、ほのかに建物の間の空に暖色を挟む。
私のクラスの担任は帰りのホームルームを秒で終わらす。だから他クラスより断然門をくぐるのがはやい。
スーパーもすぐ近くなので先に行って2人を待ってるのも日常。
ガサガサ......
突然、カゴの中に2人の好物が投げ入れられるのも慣れたもんで。
「声かけてよ」
「「いつ気づくかなーって」」
大きな袋ふたつをそれぞれが持ってくれて、私を挟んで3人揃って家に帰るこの時間がとても好きなこと。
「美陽、先風呂行ってこいよ」
「いいの?」
「片付けは俺たちの係な」
「飯作ってもらってるから当たり前でしょ」
「じゃあお言葉に甘えて」
ご飯は私
準備は奏斗
片付けは慎也
3人ともお風呂を終えたら、ソファーに並んでアイスを食べながらテレビを見ること。
「.........。」ボッー
「美陽ねむい?」
「消すよー」
3人の中で1人でもウトウトしたらテレビは終わること。
ベッドの中でも2人は私を挟んで並ぶ。
「「「おやすみ」」」
今日の2人からもらった愛は
「「その時は美陽も一緒な」」
こんな重い言葉を心底嬉しく思う
重いかな?
少し重すぎるくらいがちょうどいいんです。
これが
私の世界
2人だけが私の世界
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