第2話 ここの馬たちキャラ濃すぎて紹介だけで1話使いそうです。
―ローズガーデン乗馬クラブの愉快な仲間たち〈馬による馬紹介〉―
はるばるフランスから到着した「ローズガーデン乗馬クラブ」は関東の郊外にあって、オーナーは元・オリンピック選手だとかなんとか。
スタッフもそこそこ多くて、乗馬体験の親子から競技志望のマダムムッシューまで、まあ幅広い人間がやってくる。
クラブ所有の馬もいれば、「自馬(じば)」といって会員が自分で所有している馬もいる。全部で三十頭以上。
つまり……馬のキャラも、めちゃくちゃ濃い。
今回は、そんなクラブで僕――オリヴィエが最初に出会った仲間たちをご紹介しようと思う。
※ちなみに日本に来たばっかの検疫期間? あれは退屈すぎて語る価値もないから、ノーカンで。
◉プリンじいさん【木曽馬/伝説の系譜枠】
スタッフが「プリン」って言うの聞いた時、「えっ、誰!?」って声が出かけた。
だって見た目、完全に渋い系じいさんなのに、名前が「プリン」って。スイーツだよ? ギャップで転びそうだった。
言葉のイントネーションも独特で、「せや」「ほな」とか言い出す。
関西系? ……いや、何か違う。出身地は謎。
「流鏑馬ってやつをやっとったことがあるんや」とか、昔話を始めるとやたら誇らしげ。でもそれが妙にあったかい。
なんかもう、「人間っぽい」んだよね……いや、気のせい?
◉マリリン姐さん【馬場馬術の女王/ツンデレ枠】
尾花栗毛の麗しき牝馬、マリリン。陽の光を受けると毛並みが金色に見える、まさに“馬界のオーラ持ち”。しかもそれを自覚してる。
プライド高め、常に上から目線。強い(確信)。
中級レベルなら乗り手が多少ヘボでも帳尻合わせちゃうという凄腕。
ただし──ひとり(一頭)での放牧は大嫌い。
「無駄な時間よ」とでも言いたげに、放牧場のゲート前でずっと迎えを待ってる。
プリンじいさんとは歳が近いらしいけど、誰もそんなふうには見てない。
みんな彼女を“若々しいお姉さん”として接してる。いや、接しさせられてる。
「歳のことは言わんほうがええ」
プリンがこっそり耳打ちしてくれた。
◉ラク(ラクエル)【元競走馬の新入り/ツッコミの才能あり】
鹿毛のセン馬(←これはググって。マジで繊細な話だから)。僕よりちょっと若くて、6歳。しゃべりは普通の若者。競走馬を引退してローズガーデンにやってきた。
最初はめっちゃナーバスで、常に「警戒レベル3」くらいだったけど、頭の回転が速くて観察力がある。
最近は少しずつクラブにも慣れてきたみたいで、プリンじいさんのギャグに目でツッコミを入れるようになってきた。
……そう、声に出さず、目で。
その絶妙なツッコミが、クセになる。
◉カスパル先生【最年長/無口な哲学者】
このクラブ最年長(たぶん)。ドイツ出身、経験豊富、無駄口は叩かない。
話すときは必要最低限。でもその一言が、深い。
まるで老師みたいな語り口で、「生き方」を考えさせられる瞬間がある。
たまにドイツ時代の競技話もしてくれるけど、ぜんぜん自慢げじゃない。
むしろ、風の流れでも語るかのような静けさ。
彼からは、これからもいろいろ学びそうな気がしてる。
◉クロちゃん(たぶん本名じゃない)【クォーターホース/動かない謎枠】
黒鹿毛のアメリカンクォーターホース。しゃべらない。ほぼ動かない。
でも、あるインストラクターが近づくと、石像みたいに静止して、ビー玉のような瞳で遠くを見ている。
絶対、何かある。何かあった。
でもまだ、その壁を越えられてない。
◉颯月(そうげつ)【スーパーエリート/クラブのアイドル】
鹿毛のホルスタイナーで、サイズもスケールもまるで違う。
朝の放牧で彼が馬場の向こうからゆっくり歩いてくると、みんながつい見ちゃう。いや、見上げちゃう。
ローズガーデン乗馬クラブのスーパーアイドルホースにして、真のエリート。
しかも彼の相棒がまた、強い。オーナーの娘のみーちゃん。
プリンじいさんは「彼は別格や」って言うけど、マリリンは「完璧すぎて鼻につく」とか言ってる。
でも実際、颯月はそういうのを全部、静かに受け流してる。
さすが別格ー。
◉で、僕 オリヴィエ【語り手/そこそこ器用な若馬】
フランス生まれ、セル・フランセの芦毛、8歳。
クラブ入りしてまだ日は浅いけど、案外ホームシックにはならなかった。
なんでって? それはきっと──
この不思議で個性的な仲間たちがいたからだ。
まだ全員と仲良くなったわけじゃないけど、これからだ。
この場所で、きっと僕の馬生は、大きく動き出す。
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