第21話潜む影、動き出す疑念
白龍の分身体を消すと、身体が一気に重くなったように感じる。それに、精神も疲れたような感じがする……もしかして、白龍の分身体を出した反動だろうか。
葉桜隊長と隊員たちが部屋に入ってきて、「終わったか?」と声をかけてきた。
黒本の遺体は倒されたモンスター達の影に隠れているおかげで、見えないようになっているから予備隊員達には気づかれないはず。
「はい。葉桜隊長、ありがとうございました。僕の戦闘中、何か問題はありませんでしたか?」
「隊員達に話を聞いて分かったことなんですが、所持していた物語武器が複数消えていると」
「物語武器が!?それは非常にまずいですね」
物語武器が悪人の手に渡ったらどんなことが起こるか分からない……。
「消えた物語武器は、全部で10個」
「……捜索はこれからここに来る
「はっ!」
僕と木田が先頭、隊員たちを中央に、葉桜隊長とさらを最後尾に配置して、出口へと進んだ
保護した幼児は眠ってしまっており、さらが割れ物を扱うように大切に抱えて、面倒を見てくれている
「如月副総隊長の刀、何かさっきより弱々しく光ってないっすか?」と木田が白龍を指さした。
「ええ、そうですね」
「それが通常状態っすか?」
「どうなんでしょう。……おい、白龍」と刀に目線を向け声を掛けた。
僕が声を掛けても、白龍は寝ているかのように喋らなくなってしまった。
「さっきまでは、超喋っていたのに不思議っすね」
「そうですね」
「あ、あれ!出口っす!」と木田が前方にある扉を人差し指で指さした。敵にも遭遇せず、無事に出口まで行けて安心する。
扉を開けるとそこには武装した、沢山の
「如月副総隊長!!ご無事でしたか!!」
「行方不明になっていた、隊員達もいるぞ!医療部隊!速やかにメディカルチェックに取り掛かれ!」
「おい!幼児もいるぞ!?」
どうやら医療部隊もいたようで、僕と行方不明になっていた隊員達は医療部隊に囲まれた。仲間たちの顔を見た瞬間、胸の奥から安堵の気持ちが込み上げてきた。
あの幼児も医療部隊が調べてくれれば、人間か物語の登場人物か分かることだろう。
「如月副総隊長?何でそんなに嬉しそうな顔してるっすか?」
「……秘密です」
今まで未希と未来のことにしか目をくれず、仕事も人間関係もおざなりにしていたがそれではダメなのかもしれない。
医療部隊の者に連れて来られた場所は、捕まっていた場所から少し離れた場所にあるテントだった。
「ここでメディカルチェックをするのですか?」
「はい!一刻も争う事態があるかもしれないので、ここで行うようにと木田隊長からの指示です!」と医療部隊のワッペンを胸に付けた女性が敬礼をしながら答えた。
「木田隊長は?」
「こことは別の現場に出ております」
「分かりました」
どうやら、木田の兄木田
医療部隊のメディカルチェックを受けること15分。
「如月副総隊長、健康には何も問題ありませんでした。ですが、疲労が溜まっているようなので休息を充分に取ってください」
僕の腕から血圧機を外しながら先程の医療部隊の女性が結果を教えてくれた。
「分かった」
健康に何も問題無かったので、僕は急ぎ本部に戻ることに決めた……すぐさま緊急会議をしなければならない。
本部に着くなり僕は木田に「各隊の隊長に緊急会議をするから、至急会議室に集まれと伝えて下さい。治療部隊、研究部隊の隊長を含めてです」と指示を出した。木田は「はっ!」と敬礼し指示を伝える為、急ぎ足で去っていった。
「会議中にこいつが邪魔をするかもしれないから、部屋に置いとくか」
今、白龍は静かだが会議中にうるさくされたら困るしな。
白龍を副総隊長室に置き、会議室に向かうと各隊の隊長は席に着席していた。
「早いですね……珍しく総隊長も始めからいるんですね」
「お前が、緊急会議を開くと聞いてな」と獅子神総隊長が腕を組みながら、椅子の背もたれによっかかり僕を待っていた。
「なるほど。では、挨拶は時間の無駄なので省きます。事が事なので……」
今回の緊急会議の参加者は横田遊星
「で?何が起こった?」
「単刀直入に言います。
僕の言葉を聞いた面々が驚いている。
「あの、如月副総隊長……それは誠ですか?にわかには信じ難いのだが……」と郷田隊長が顔をしかめっ面にし、裏切り者がいるのを信じていない。他の隊長たちも互いの顔をうかがい合い、目を伏せる者、腕を組む者など反応は様々だった。
「如月副総隊長、お一つ聞いても?」
「何ですか、横田隊長?」
「
「そうだな。ここにいる全員が、その理由を知りたいはずだ」と獅子神総隊長も腕を組んだまま頷いた。
「分かりました。まず、一つ目……黒本刑事が物語武器を所持していたから。二つ目、探索に特化した物語武器を使ったにも関わらず、僕と誘拐された予備隊員達の居場所を発見するのに二週間も掛かったから。三つ目、探索を妨害する物語武器の紛失です。この会議室に来る前に確認しました。最後に……黒本が自殺をする前、奇妙な言葉を残したんです」
「何だ、奇妙な言葉っていうやつは」と獅子神総隊長が顎を触りながら聞いてきた。
「敵が俺だけだと思うか?……と残したんです。なので、これらを踏まえて裏切り者がいると判断しました」
ずっと難しそうに何かを考えていた福屋隊長が「確かに裏切り者がいるかもしれんの」とポツリと呟いた。
「獅子神総隊長、裏切り者を探す臨時の隠密班を設立すべきだと進言します」
「ああ、そうだな。では、臨時の隠密班を設立決定とする。如月、メンバーはお前に任せる」
「はっ!」っと獅子神総隊長に敬礼した。
何名か臨時の隠密班設立に難色を示しているのが、無言でも見て取れる。いや、もしかすると隠密班のメンバーを選ぶのが僕だから難色を示しているのかもしれない。
即座に臨時の隠密班のメンバーを考えるが……選んだ人が裏切り者だったらと考えると……。そして、難色を示している者を選ぶのは論外だ。
「では、葉桜隊長、グランブルー隊長この二名にします。グランブルー隊長、貴方が最も信じられる
「「はっ!」」グランブルー隊長と華原副隊長は僕に向けて敬礼した。
「如月副総隊長!自分も参加したいです」と郷田隊長が声を上げ、目をギラギラとさせている。
「郷田隊長も……ですか。ですが、隠密班はグランブルー隊長と葉桜隊長に任せます。隊長が多ければよいというものではありません」
「ですが、自分もこの
「郷田隊長は、もう十分役に立っていますよ」
郷田隊長は渋々「はい」と了承してくれた。僕は視線で、緊急会議の終了を獅子神総隊長に促した。
「では、今日この場で聞いたことは、外部に漏らすことを禁ずる」
「はっ!」と僕たちは敬礼をし、緊急会議を終えた。
僕たちの裏切り者は、誰なんだ……。
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