ケンが会場（かいじょう）の席（せき）に

もどるころには、

吉右衛門（きちえもん）の発表（はっぴょう）は

始（はじ）まっていました。

ケンは席（せき）に着（つ）く際（さい）、

周（まわ）りの動物達（どうぶつたち）の様子（ようす）に、

いささかおどろか

されました。

みんな食（く）い入（い）るように

吉右衛門（きちえもん）の発表（はっぴょう）を

聞（き）いているのです。

ケンは急（いそ）いで、

最前列（さいぜんれつ）にすわる

ネズミ大先生（だいせんせい）に、

目（め）を走（はし）らせました。

彼女（かのじょ）の小（ちい）さな

後（うし）ろすがたは、

身（み）じろぎ一（ひと）つせず、

全身（ぜんしん）を耳（みみ）のようにして、

吉右衛門（きちえもん）の話（はなし）を

聞（き）いています。

自分（じぶん）の発表（はっぴょう）の

時（とき）とはちがう、

会場（かいじょう）のふんいきに

あっとうされて、

ケンはとなりにすわる

シラサギにたずねました。

「いったい、

何（なに）が起（お）きているのですか」

　すると彼女（かのじょ）は、

くちばしに羽（はね）を

当（あ）てて言（い）いました。

「しっ。今（いま）、とても

興味深（きょうみぶか）い研究発表（けんきゅうはっぴょう）の

最中（さいちゅう）ですよ！」

　そこでケンも、

吉右衛門（きちえもん）の声（こえ）に

耳（みみ）をかたむけめました。

「占（うらな）いと聞（き）くと、

みなさんは迷信（めいしん）だと

笑（わら）うかもしれません。

科学（かがく）が発達（はったつ）して、

色々（いろいろ）な事（こと）がデータや

研究（けんきゅう）によって明（あき）らかに

されている今（いま）、

占（うらな）いは古（ふる）めかしい

時代（じだい）おくれの物（もの）に、

みなさんには

思（おも）えるでしょう。

しかし占（うらな）いが、

はるか昔（むかし）から

世界中（せかいじゅう）にあり、

今（いま）にいたるまで脈々（みゃくみゃく）と

受（う）けつがれていること。

また、今（いま）だに一定（いってい）の

生（い）き物（もの）からの支持（しじ）を

得（え）ていることは、

確（たし）かな事実（じじつ）なのであります。

そこでぼくは思（おも）ったのです。

占（うらな）いは神様（かみさま）が造（つく）った、

生（い）き物（もの）の人生（じんせい）を

読（よ）み解（と）く数式（すうしき）の、

一（ひと）つの形（かたち）ではないかと」

　吉右衛門（きちえもん）の言（い）っている事（こと）は、

だれもがばかげて

いると笑（わら）っても、

おかしくはない内容（ないよう）でした。

しかし話（はなし）をする吉右衛門（きちえもん）は、

生（い）き物（もの）を引（ひ）きつける

張（は）りのある声（こえ）で、

生（い）き生（い）きと会場（かいじょう）中（じゅう）の

生（い）き物（もの）に語（かた）りかけました。

ケンの目（め）にはそれが、

とても堂々（どうどう）として見（み）えました。

読んでいただき、ありがとうございます。

次回の掲載は２０２５年１０月２４日です。

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