ーかけがえのないあなたへー

　青（あお）い森（もり）と言（い）う所（ところ）へ、

行（い）ったことがあるでしょうか？　

もし、

星（ほし）がなる木（き）をごぞんじなら、

そのまま月（つき）がのぼる方（ほう）に

向（む）かって山（やま）をこえます。

そしてすずらんのおかを通（とお）りすぎ、

小（ちい）さな川（かわ）を三（みっ）つわたるのです。

運（うん）よく深（ふか）い森（もり）に着（つ）いたなら、

さあそこが、

先（さき）ほど言（い）った青（あお）い森（もり）なのです。

　その森（もり）の犬町（いぬまち）に、

イヴやミルク、

オーティスは住（す）んでいます。

三人（さんにん）は姉弟（してい）でしたが、

種類（しゅるい）は全然（ぜんぜん）ちがっていました。

長女（ちょうじょ）のイヴは、

ぽちゃぽちゃとした

美（うつく）しいダルメシアンの女（おんな）の子（こ）で、

真（ま）っ白（しろ）い毛（け）に黒（くろ）い

はん点（てん）が少（すこ）しだけ、

体（からだ）にもようをえがいていました。

彼女（かのじょ）の両耳（りょうみみ）は真（ま）っ黒（くろ）ですが、

顔（かお）にはほとんどはん点（てん）はなく、

ただ目（め）の上（うえ）にアイシャドウのように、

整（ととの）ったもようがあるのでした。

イヴはもも色（いろ）のくちびるが

チャームポイントの、

明（あか）るい女（おんな）の子（こ）です。

次女（じじょ）のミルクは、

その名前（なまえ）からは

想像（そうぞう）できないような、

茶色（ちゃいろ）の毛（け）をした

雑種（ざっしゅ）の女（おんな）の子（こ）です。

毛（け）は長（なが）くおだやかな

波（なみ）を打（う）っており、

黒（くろ）いひとみはやさしげで

いつもきらきらとしていました。

一番下（いちばんした）のオーティスはというと、

少（すこ）し毛足（けあし）の長（なが）い

ジャック・ラッセル・テリアの

男（おとこ）の子（こ）です。

彼（かれ）は体中（からだじゅう）、真（ま）っ白（しろ）い毛（け）で

おおわれていましたが、

左耳（ひだりみみ）と目（め）の回（まわ）りだけが

茶色（ちゃいろ）いアイパンチでした。

茶色（ちゃいろ）い耳（みみ）の先（さき）っちょは、

これまたポチンと

白（しろ）くなっていて、

それが彼（かれ）のトレードマーク

なのでした。

　森（もり）の中（なか）に、

三人（さんにん）の家（いえ）がありました。

その一階（いっかい）でイヴはカフェを、

二階（にかい）でミルクは香水（こうすい）と

せっけんの店（みせ）を開（ひら）いており、

三人（さんにん）はそれで生計（せいけい）を

立（た）てていました。

その店（みせ）は『かわいい犬（いぬ）のお店（みせ）』

とよばれていました。

三人（さんにん）はこの森（もり）で、

気（き）のいい仲間達（なかまたち）と、

楽（たの）しくくらしていました。

三人（さんにん）にとってわすれられない、

不思議（ふしぎ）な冬（ふゆ）が通（とお）りすぎると、

いつしか季節（きせつ）は、

またかがやくような

春（はる）へと変（か）わっていました。

読んでいただき、ありがとうございます。

次回の掲載は２０２５年８月１３日です。

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