第24章「わたしたちの音、次のステージ」

町田駅前のスタジオ“ToneBridge”。

Silent Riotは、次の曲作りのために朝からスタジオにこもっていた。


「ことねのソロ、マジで良かったよ」

彩葉が言うと、ことねは少しだけ恥ずかしそうに笑った。


「……ありがと。でも、なんか“次”が怖くなったかも」


「それな」芽依がヘッドホン越しにぼそっとつぶやく。


🌐数日前の出来事が、3人の中で静かに残っていた。


“Silent Riotが次のBackyard Beat大会・町田代表に選出”

SNSや町田周辺のラップユニット界隈では、ちょっとした話題になっていた。


「……なんか、急にステージが変わった気がする」


ことねの言葉に、芽依はパッドを叩きながら言う。


「変わるしかない。

 ソロだったら、失敗しても“自分だけの責任”だけど、ユニットは違う」


「みんなの音で、みんなのリリックを背負ってるってことか」



「……てか、ことね」彩葉が言った。


「今度、学校でライブやろうよ」


「……え!? 校内で?」


「うん。“ラップってカッコいい”って思ってもらいたい。

 ……わたしら、もう“見る側”じゃなくて“見られる側”だと思うんだ」


ことねはその言葉に、しばらく沈黙した。


「……見られるの、怖い。でも、届けたい気持ちは変わらない」


「ならやるしかないっしょ」芽依がポンと机を叩いた。


「“わたしたちの音”って、まだ本気じゃ鳴らしてない気がするし」


🎶 新曲制作スタート:仮タイトル「townscape」


コンセプト:

「この町に住んで、この町で迷って、この町で見つけた音」

ジャンル:ミディアムスロージャズ × ブーンバップ


🎤ことね仮Verse:


『退屈だった交差点に

 知らない音が 落ちてた朝』


『誰も気づかない日常に

 ラップっていう 灯りが灯る』



ことねは、駿河屋で東雲りなと出会ったときのことを思い返していた。


“こっちは模型で魂乗っけてるから、あんたは音で乗っけてきな”


その言葉が、今でも胸に残っていた。


→ そのとき見たRGストライクバイオレット(東雲の代表作)が、

 「色で語る」表現の強さとしてことねのリリックにも影響を与えている。


📍夜、町田総合高校・屋上


ことねがひとり、夜風に吹かれながら呟く。


「“わたしたちの音”って、まだまだこれからなんだよね」


ポケットの中には、次の大会用の申請用紙。

そして、震える手で書かれた文字。


“Silent Riot、挑戦します”


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