第15章「Silent Riot、疾走の夜」

📍町田駅北口・ライブハウス “Blue Echo”

小さな箱、でも音はでかい。照明が目に刺さる――


Backyard Beat本戦・ナイトセッションライブ

上位ユニット限定の公開ステージ。

観客200人超。

学校帰りの女子高生ユニットが“深夜のラップ”に挑む初体験。


🎧開演前:バックステージ

ことねはマイクを見つめながら、深呼吸を繰り返す。


ことね(心の声):


昼と違う、ざわめき。

大人っぽい。怖い。

でも……ここでも“私の声”は通用するのか、試したい。


芽依:「……観客、若くない。ラップ好きのガチ勢多め。緊張するね」


彩葉:「でもさ、こんな空気の中でも、私たちの音を鳴らせたら――きっと本物だよ」


🎶Silent Riot新曲:「疾走(しっそう)リズム」

ジャンル:J-Rock調トラック × リリカルラップ

テーマ:「逃げたい夜を、走って乗り越える音」


🎤ことねのVerse:


『逃げたい夜が また来ても

 黙らない 止まらない

 声じゃなくて 音になって

 わたしを ここに 繋ぎとめて』


『“怖い”を 叫んだら

 “走れ”に 変わった』


『Silentでもいい でも私は止まらない

 この夜を わたしのリズムで――疾走(しっそう)する』


→ ギターのリフが走る。

→ 彩葉のコーラスが叫ぶ。

→ 芽依のスクラッチがうねる。

→ ことねが――はじめて、前に出て歌いながら走るように動いた。


🎤ライブ終了後――客席にて反応

「……なんだ、あの子……動いたぞ」

「声ってより、音になってたよな」

「わかる。“音の疾走感”ってやつだ」


→ 初めて、“陰キャの詩”が“疾走する音”として刺さった瞬間。


📍帰り道・夜の町田駅前

夜風が三人の髪を揺らす。誰も口を開かない。


芽依:「……ことね、今日のラップ……音だったよ」


彩葉:「ね。声じゃなかった。“走ってた”もん、あんたの言葉」


ことね:「……うん。怖いままだったけど。

 でも、走ってる間だけ、怖くなかった」


→ ことねが、“ことばで立ち止まらなくなった”記念日。


猫丸が、相河修二と立ち話している。


猫丸:「音と模型って、案外似てるんだぜ。どっちも“魂を乗せる器”だからな」


相河:「……あなた、何者なんですか?」


猫丸:「ただの観客さ。世界って舞台の、な」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る