第11章「再起動ビート ― Backyard Beatへの招待状」

📍数日後、町田市総合高校の屋上。

放課後の風が、あの悔し涙の匂いを運んでいた。


沈黙の三人組――Silent Riot。

それぞれの鼓動は、まだ乱れていた。


🍀彩葉が一言、風を断ち切る。


「ねぇ、また……やろっか」


🌙ことねはうつむいていたが、顔を上げて微笑んだ。


「……うん。今度は、もっと“自分たちの音”で」


🎧芽依は黙ってスマホを見せる。


『Backyard Beat』町田予選開催決定!

高校生限定ラップユニットバトル。優勝チームは都大会へ!


🌀三人の視線が重なり、ふたたびギアが入る。


🎹音楽室(仮スタジオ)――芽依の提案

芽依がパソコンを開いて語る。


「……次は、あのRaindrop Raveと同じ舞台。でも、**“Silent Riotの音”**で行こう」


ことね:「Silentな音って、なに?」


芽依:「静かな音じゃない。“伝えたいこと”がある音って意味で、私はそう捉えてる」


彩葉:「いいじゃんそれ!ことねの詩、最近どんどん色ついてきたし!」


ことね(心の声):


――私は音を知らない。でも、あの日あのステージで、

心が少しだけ震えた。“わかりたい”って、初めて思った。


彩葉:「今度はね、ジャパニーズロックっぽいラップもやってみたくて!」


芽依:「実はね、ミクスチャー系トラック……作ってみたんだよね」


(芽依、再生ボタンを押す。ギターサンプルにヒップホップビートが乗る)


ことね:「……これ、すごく“叫び”に合いそう」


芽依:「うん。“祈りの裏拍”、じゃなくて今度は――“叫びの表拍”」


彩葉:「よーし!Backyard Beat、エントリーしちゃうよ!!」


(送信ボタンを押す)


ことね:「怖いけど、……またやってみたい。あの日、あんなに負けたのに、ね」


芽依:「それが“音”をやるってことじゃん」


猫丸:「再起動か。いい音が鳴りそうだな」


ことね:「……なんでいつもいるんですか」


猫丸:「音の匂いが好きでな。お前らの音は“痛みの残り香”がする。……けど、それでいい」


芽依:「また名言ぽいこと言ってる……」



ことね「あ、あの人……ガンプラ抱えてた?」


彩葉「うわ、めっちゃ綺麗な髪色だったね。紫?」


芽依「“東雲パープル”……だったりして」


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