第8章「Silent Riot、始動 - 初ステージは突然に」

「……え? ステージ、今日!?」


ことねの声が、音楽室に響いた。


「うん。VOX MACHIDAのオープンマイク枠が一枠だけ空いたの」

いろはがニコニコしながら、事もなげに言った。


「マジ!? 心の準備ってもんが……」


「むしろその“心の準備できてない”状態でやるのが青春じゃん」


芽依が口角をキュッと上げた。

Silent Riot、結成後わずか一週間。

練習もままならないまま、3人はステージに立つことになった。


📍VOX MACHIDA ライブハウス内

そこは、狭くて暗くて、それでいて熱が渦巻く空間だった。


「町田のアングラ文化って感じ……」

ことねが震える声で呟く。


観客はわずか30人。でもその30人が全員、“見てる”。


「緊張してる?」

いろはがことねの背中をポンと叩いた。


「……ちょっとだけ。でも、もう逃げない」


🎤ステージ開始!

MC紹介のあと、ビートが流れ始める――


【DJ HAL提供:裏拍フロー専用トラック】


トップバッター:芽依

 「Yo Yo!声にならねぇ感情を 言葉に乗せて届けんだよ!」

 元気さとスピードが武器。観客が手を上げ始める。


続いて:いろは

 「甘くてビターなこの日常 ラップで彩る彩葉の魔法♡」

 まさかのアイドル系ラップ!? 女子客が歓声をあげる。


ラスト:ことね(KOTONE)

 「静けさの奥にある 爆ぜる衝動

  心の殻をビートで砕く Silent Riot…覚悟の咆哮!」


 ――裏拍、乗った! 完全にリズムに乗ってる!

 その瞬間、場の空気が一変した。


「……ことね、覚醒しやがった……!」

DJ HALが思わず唸る。


ステージ終了後、会場は――


「おぉぉぉぉぉおお!!!」

歓声、拍手、スマホの撮影、SNSでバズる瞬間。


「今の……今のが“Silent Riot”だってよ!!」


ステージ裏

「……わたし、ラップが好き。ラップで、私になれる」


ことねが涙をこらえながら呟く。


いろはと芽依が手を差し出した。


「これが始まりだよ、KOTONE」

「3人で、もっとヤバい景色見にいこ」


3人は拳を重ねた。

町田から、日本へ――Silent Riotの伝説が、今始まった。


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