第7章「覚醒前夜 - 裏拍のその先へ」

「――はぁぁ、やっぱり無理かも……」


夜の町田総合高校・音楽準備室。

ことねは机に突っ伏したまま、指先でビートを刻んでいた。

裏拍のリズムが、まだ掴めない。


「なんでみんなみたいにカッコよく言葉乗せられないんだろう……」


そんな彼女のもとに、一通のメッセージが届く。


🐈【猫丸】

『ことね、お前はリズムの“裏側”を歩いてる。だから、そこにしかない景色が見える。

神ラッパーは音を支配するが、真のMCは感情を解放するだけだ』


「……猫丸さん……もう何言ってるのかわかんないけど、なんか……わかる……」


その頃、サイゼではいろはと芽依が密会(ただのミーティング)


「ことね、ヤバいくらい悩んでる。でもあの子、ステージに立ったら変わるよ」

「ふふふ……ラップはね、心が叫びたいときがいちばん強いのよ」


そこに偶然現れる鮎原やよいと郷原ゆい。


「おや?ラッパーギャルたちじゃない。あなたたち、展示会のときの……」


「え!?鮎原さん!?あの無塗装プロビデンスの!?」


芽依が即座に立ち上がる。


「えーと、ラップ女子たち? Silent Riotって言ったっけ。町田……面白くなってきたわね」


「うちの後輩も音楽やってるし、リンクできたら面白いかも。あ、今度模型バーイベントあるから来てみてよ♡」


深夜、町田駅南口、謎のライブハウス「VOX MACHIDA」

「次の高校生ゲスト枠、Silent Riotでいいのか?」

スタッフがチェックする。


「うん。面白くなりそうだぜ」

そこにいたのは、SHIN-GOのバックDJである伝説のトラックメーカー・DJ HAL。

目を細めて呟いた。


「“KOTONE”……裏拍で戦うMC。楽しみにしてるぜ」


翌朝。

登校途中、ことねは忠生公園前の坂で自転車のブレーキをかけた。


「――聞こえる。わたしのビート」


彼女の中で、ようやく音と心がひとつになり始めていた。

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