エピローグ
“
ナタリアは、机にノートを広げて、新しい脚本を書き始めていた。
クロエは、“
そして、リナリィは工房の床に腰を下ろして、鉄箒の柄をみがいていた。
「今日はいつもより、外がにぎやかですね」
ナタリアが、ふとノートから視線を上げた。
「あれね、すぐ外でレースやってんだよ。箒レース」
リナリィが、箒を磨き終わった布切れをポケットに突っ込んで言った。
「あら、めずらしい。いつもなら、だれよりも飛びたい飛びたいっておっしゃっているではありませんか」
「……今回は、出ないことにしたんだ」
「え、なんで?」
クロエが、目を丸くして聞いた。
「ちょっとだけ、飛ぶ理由を考えたくてさ」
リナリィは、ゆっくり立ち上がった。
「“魔法使いの夜”で、空に描いた魔法陣と星空……あたし、あれを
空に現れた満天の星空と、地上へ向かって降り注ぐ無数の光。その光景が、リナリィのまぶたの裏に焼き付いて、
「そのときのドキドキが止まらないんだ」
「なら、私があなたの夢を信じましょう」
ナタリアが、言った。
「だれより速く駆け抜けてきたあなたですもの。きっと、すぐに自分の夢に追いつくでしょうね」
「ま、しばらくは夢のまた夢だね」
「な、なんでだよ!」
クロエは、右手の指を折って数えた。
「あのとき“星の魔法”ができたのは、“
そして、クロエは鉄箒を指差した。
「あの夜、あんたはこの世界でいちばんの箒に乗っていた。それがそろわないと、あのスピードは二度と出ないよ」
鉄箒の
その中には、クロエが付けた、小さな魔鉱石が取り付けられている。
「もう、本当に大変でしたわ。魔鉱石は盗んだのではなく、あくまでお借りしたかったこと。もちろん、返すつもりであったこと。そして、お父様とドラゴミロフ家、並びにマギ専にご迷惑をおかけしたことへの謝罪……。この件についてお咎めなしとしていただくのに、この一週間、どれだけ手紙を書いたか数え切れません」
「ごめんな、もっと速くできたのに」
クロエが、鉄箒に向かってつぶやいた。
「誰に言っていますの!?私にも言いなさいな」
「私が私の道具に謝ったっていいでしょ」
2人がさわぎだす横で、リナリィは、鉄箒を見た。
「ううん、あたしこの箒が好きだ。3人で見つけて、クロエが作ってくれたこの箒が」
磨きあげた黒い鉄の柄が、窓から差し込む光を受けてキラリと光った。
「それに、こいつもすごく速いから」
「そうですわね」
「だな」
2人は、ゆっくりとうなずいた。
そのとき、だれかが階段を上がってくる音がして、ジジが工房に顔を出した。
「あ~、3人ともいるじゃん。お姉ちゃんがね、頑張ったから薬茶淹れてくれるって言うから、降りておいでよ〜。ついでに、わたしのインタビューにも答えてね?」
3人は、顔を見合わせる。
「それなら、少し休憩にしましょうか」
「エミルさんのお茶飲むだけ。取材は聞かないから」
「あたし、甘いやつ!」
リナリィは、真っ先に階段を降りていこうとして、足を止めた。
くるっと振り返ると、工房の机にそっと鉄箒を置いた。
「……また飛びたくなったら、ここに来ればいいよね」
クロエとナタリアが顔を見合わせて、うなずく。
そうして、3人は、
マギカ・トライアングル! 擬天傘 @unam93
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