第3話 私は凡人じゃない!
里美は100万円を振込み、翌週からいよいよ桜のスクールのサービスが始まった。
内容は主に桜がSNSの使い方などを説明している動画コンテンツ、月1回のオンラインでの個別コンサル、分からないことなどの個別メッセージ、そして、定期的にスクール生同士でのリアルな集まりがあるとのことだった。
「来週の土曜日、リアルの集まりがあるから、良かったら里美さんも来ない?
やっぱりビジネスの作業って孤独だし、いろんな人と話をすることで視野もかなり広がるよ」
桜に誘われて、里美は結婚してからこんなにワクワクしたのは初めてかも、と思った。
元々内向的な性格の里美は友達が少なく、ママ友もいない。
やっぱり100万円思い切って払って良かった。今まで味わったことがない不思議な感覚だ。
「でも、着て行く服がない、どうしよう」
桜が主催する集まりだから、みんな華やかにに違いない。しかも場所は高級ホテルのラウンジ。
そうだ、美容室も予約しないと。
里美は普段は近所の安い美容室に行っている。それでももう半年も美容室に行ってないから、髪もボサボサになってきている。
里美は桜のスクールに入会後、自分名義のクレジットカードを作った。
これなら尚之にバレないで買い物ができる。そう目論んだのだ。
翌日里美は桜が愛用しているブランドの服を買いに行った。
垢抜けない自分なんかでは、店員に適当にあしらわれるかと思っていたが、里美がそれなりの金額を使ったからか、店員の対応は割と丁寧だった。
明日はこの新しい服を着て美容室に行こう。
ネットで調べて、何となく良さそうな青山の美容室に予約を入れた。
里美は自宅の全身鏡に映る自分を見て、違う人間を見ているような感覚に陥った。服装と髪型でこんなに雰囲気が変わるとは思ってもいなかった。
でも、桜さんに比べたら自分はまだまだ足元にも及ばない。
今度は化粧品も色々買って、メイクの研究もしないと。
それと、この服は家族にはバレないようにしなきゃ。
里美は新しいワンピースを脱ぎ、いつもの生活感のある服に着替えた。
「里美さんですよね?」
待ち合わせ場所で女性に声をかけられた。
「はい、里美です。桜さんですよね?今日はよろしくお願いします」
里美は一目見た瞬間、彼女が桜だと分かったが、正直、SNSで見るよりも普通っぽい容姿だった。
でもだからこそ、里美はますます桜に対する興味が湧いてきていた。
集まりのことを彼女たちは「お茶会」と言っている。
人数は里美を含めて6人だった。
相談していた通り、みんなお洒落で小綺麗な格好をしている。
やっぱりちゃんと服を買って美容室にも行って良かった、と里美は思った。
彼女たちは全員桜のスクールの生徒だが、みんな何をして稼いでいるのか初参加の里美にはよく分からなかった。
ただ、意外とみんな里美にも優しく話しかけてくれて、和やかな雰囲気だった。
あっという間の3時間だった。
帰り際に桜が、
「皆さん、また来週お茶会やりましょう!」
と言い、里美は次のお茶会が待ち遠しくなった。
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