例えば恋は、相手を理解しよう、理解していきたいと考えることに喜びや嬉しさが募りますが、今回の杉山さんの作品はまさにそのような気持ちになるような短歌に溢れていました。
自分には解釈が難しいな、理解しきれていないかもな、そう思いながらも思わず読み進めていけるのは、言葉の持つ三十一字の淡麗さと、さらりと組み合わされる単語の妙だと思います。作者の【オリオン座しか〜】の一首で表現されているようにわからないからこそ惹かれるものもある。
その分、ばちりとはまった時の衝撃は素晴らしく、例えば一番初めの【あの家の〜】のパルムの一首はパルムというアイスクリームのチョイスが絶妙で、そうだよなあ、それだよあ、と思わず唸るような作品だったし、【惹かれあって〜】のプリキュアの短歌は、テンポの良い語感でなんてことを言うんだと思わず頬が緩みました。(緩むのが正解なのかは分かりませんが)
また、【もう二度と】の作品で書かれる恋の様は、三十一字だからこそグッと高まるものがあったり、【ポケットの】で書かれていることなどは、何か生きている時の物足りなさを体現しているようで一番心に刺さったりしました。
まだ、ここから私が良いと思う作品が生まれるかもしれないことに期待しながら、杉山さんという作者の洞窟の中を、光る叙情を見つけにまたサルベージしたいと思います。