第52話 命懸けの避難誘導! 戦場と化す校舎と、不意打ちのキス
非常ボタンを押したことで、各教室内が騒然となる。俺は教室に戻り、慎重に逃げることを指示した。めぐちゃんが大声を上げる。
「みんな! 落ち着いて! わたしが暴漢に出くわさないように指示します。グラウンドには出ずに、体育館沿いを通って校門まで行き、その後は各自、分散して安全な場所に逃げてください。この二学年の誰一人として犠牲者が出ないように、わたしは全力を尽くします! みなさんの協力が必要です! よろしくお願いします!」
「「分かった!」」
クラスがまとまりかけたその時、担任が叫んだ。
「勝手な行動をするんじゃない! 一旦席に戻れ! 校長と相談してから今後どうするかを決める。お前らは、ここで待機をするんだ」
「黙れ! この際、言っておく! 前々からお前の授業はくそ面白くねえんだよ! お前も教師だったら、生徒達のことを一番に考えろ! 何が席に戻れだ! いつもいつも偉そうに! 今が一刻を争う命の危機なんだよ! てめえ、ふざけんじゃねえぞ! 何が相談だ。何も出来ないんだったら黙ってろ!」
いつも冷静な
教室が一瞬静まり返るが、俺は構わず指示を飛ばす。
「三人の暴漢は、俺と
「「おう! 任せてくれ!」」
「南浦部第一の意地を見せてやろうぜ! みんな! いくぞ!」
「「おう!!」」
掛け声と共に生徒たちが動き出す。 俺の所に、
「あたしも何かやれることない?」と
「うちも」と
「わたしは、三組の誘導を任せて。
「みんな、ありがとう!
俺は普段と違った丁寧な口調で、彼女達に指示を出した。
「
セイラは涙ぐんでいる。
「大丈夫だよ。俺、運はそこそこあるから。多分、ふふっ。じゃあ、お願いします!」
三人は教室を出て行った。
だが、ガラッとドアが開く音がして、
「あのときのお礼、ちゃんとしてなかった。改めて、ありがとうございます」
「いやいや」
「過去のトラウマから逃げずに、頑張ります!」
「はい」
「わたしは、あなたのことが好きです」
一瞬、俺の思考回路が遮断され、壁の一点を見つめるだけの時間が過ぎる。
「必ずミニコンサート、来てくださいね。じゃあね!」
「……はい」
俺の目線の先には、無邪気に手を振る
――いかん。こんなところで、呆(ほう)けている暇はない。三年生は
一方、職員室では大混乱が起きていた。
「もう一部の生徒が避難をしているらしいです! 一応、警察に連絡します」
「不法侵入者は何人だ!」
「二人ですかね。いや、一人?」
「我々はここに残っていても大丈夫ですかね。鍵とか閉めたら時間が稼げるかと」
「あの! そんなのどうでも良くないですか! 一番の優先事項は、生徒達の元へ一刻も早く行くことでしょう!」
野球部監督の
「前々から思っていたんだけどな。お前、かっこ付けんなよ! 和を乱すな! 管理職の指示に従え! こういうときに大人が冷静にならないとどうするんだよ」
数学担当の
「俺は退職覚悟で、くそどうでもいい規律とやらを破ってやるよ! 俺にとって生徒達の命が第一優先だからな! 俺は生徒達の元へ行く! たとえ侵入者と差し違えても生徒達を守る! お前ら勝手にやってろ! この保身優先者どもめ!」
「私も
その凛とした声は、
「ありがとう!
「はい! じゃあ、一緒に行きましょう! 生徒の元へ」
二人はガッチリと握手をして、職員室のドアを蹴破る勢いで開け放ち、走り出した。
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