第47話 大江拓哉の恋愛(2)

 野球部の練習後。


「……あの、さっきは、LINEありがとう」


 大江おおえは、ひどく照れながら、隣を歩く加藤かとうさんに言った。


「……うん」


「……高橋たかはしって、いい奴だろ?」


「うん、すごく」


「えーと、いつもは、松島まつしまさんたちとダンスの練習を? 俺、野球バカだから、最近の流行りの歌とか、あんまり知らなくて……。ダンスって、曲に合わせて踊るのか? それとも、適当に? ……あっ、ごめん、変なこと聞いて」


「ふふっ。うん、今の発言、セイラちゃんにチクっちゃうかも」


「う……。あいつ、すげえ気が強そうだから、めちゃくちゃ怒鳴られそうだな」


「ふふふっ、冗談だよ。セイラちゃんは、根は優しいから、怒鳴ったりしないよ」


「そっか。……あのさ、今度の日曜日、野球部が休みなんだ。えーと、その……よかったら、また、LINEするから……」


「うん!」


 加藤かとうさんが、ぱっと花が咲くような笑顔で頷いてくれる。


 嬉しさと同時に、急に不安が押し寄せてきた。


「……こんな、俺なんかで、いいの?」


「……ん? ……ううん。まだ、そんなに知り合ったばかり、だし……」


「あっ、そっか。だよな。はぁ……俺さ、こういうとこなんだよな……」


「……別に……。そういう、不器用なとこも……いい、と思う……」


 加藤かとうさんは、そう言うと、急に頭が重くなったかのように、こてん、と俯いてしまった。


「ハルっち(高橋遙人たかはしはると)からも、『たっくん(大江拓哉おおえたくや)はデリカシーがなさすぎる』って、よく言われるんだ」


高橋たかはし君とは、本当に仲がいいんだね」


「この前、一度、大きな喧嘩をしたけどな。あれも、全部俺が悪かったんだ。……あいつは、野球でも、それ以外でも、最高の〝相棒〟だし」


「男の人の友情って、なんだか、憧れるかも」


「ハルっちは、マジでくそ生意気な奴なんだけど、でも、こんな俺のことを、心の底から信頼してくれてる。……日頃から、もっと感謝の言葉を言わなきゃなって、思ってはいるんだけどな。……あっ、やべ、俺、何言ってんだろ。めっちゃ恥ずかしいんだけど」


「ううん、いいじゃん! そういう話、わたし、もっと聞きたいな」


 その言葉に、勇気をもらった。


「……あの、さ。て、手を、繋いでも、いい……?」


「……うん」


(落ち着け、俺。落ち着け……。あー、駄目だ、心臓が……。まあ、もう薄暗いし、顔が真っ赤になっているのもバレないか……)


「どうしたの? 急に、もぞもぞして」


「あ、いや! ほら! 今夜は、月がまん丸だ! すげえ、美味しそう!」


「おいし、そう……? ん、う、うん」


(ありがとな、相棒。……改めて見ても、加藤かとうさん……可愛いな。……あっ、また、もぞもぞしてるって思われてるかも)


 商店街のネオンが輝く中、ぎこちなく手を繋ぎ、駅へ向かう二人。


 その姿は、誰が見ても、お似合いのカップルにしか見えなかった。


 やがて、駅に着くと、二人は、笑顔で互いに手を振り、それぞれのホームへと歩き始めた。



◇◇◇


加藤美里

https://kakuyomu.jp/users/aoisorakirei/news/822139836301653907

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