第23話 逆転甲子園への道⑧

【高校野球地方大会 第四試合】


 対戦校:金浜かなはま高等学校(エース:安田幸太郎やすだこうたろう、捕手:横山健太)

 投手力と守備力が高く、今大会、ここまで無失点を継続中。


【南浦部第一高等学校・スターティングメンバー】


1. 二塁 新野にいの 健太けんた(2年):俊足のチャンスメーカー。お調子者で遙人はるとのツッコミ役。


2. 一塁 松田まつだ 優作ゆうさく(2年):俊足で堅実な守備。新野にいのと仲が良い。両親が伝説の俳優好きで命名。


3. 捕手 高橋たかはし 遙人はると(2年):頭脳的なリードと高い盗塁阻止率が武器。予選の高打率から三番に定着。(以下略)


4. 投手 大江おおえ 拓哉たくや(2年):球速・制球は一級品。多彩な変化球と長打力が魅力。予選で本塁打4本。(以下略)


5. 遊撃 三浦みうら 貴浩たかひろ(3年・主将):守備・送球が一級品。長打力もあり、チームの精神的支柱。


6. 三塁 杉山すぎやま 貴志たかし(3年):二番手投手。安定した守備と送球で後輩に慕われる。


7. 左翼 中川なかがわ 英二えいじ(3年):元エース。肩の故障で外野に転向。プライドが高く寡黙。


8. 右翼 山田やまだ 将志まさし(3年):元正捕手。遙人はるとの入部で右翼へ。ほんわかした性格。


9. 中堅 中本なかもと 雄大たけひろ(1年):三番手投手。将来のエース候 補。制球は荒削りだが球速がある。


 審判の「プレイ」の声が、球場に響き渡る。


 一回表。先頭の新野にいのが、初球、絶妙なセーフティバントを三塁線上に転がす。三塁手が素手で掴み、ランニングスローで送球するも、新野にいののヘッドスライディングが勝り、セーフ。

 続く二番・松田は、送りバントをきっちり決め、ワンナウト・二塁。


 三番・高橋遙人たかはしはるとが打席へ。初球、鋭く曲がるスライダーを見送り、ワンストライク。

(次は、外角のストレート。ボール気味の球を要求してくるはず。ストライクゾーンに来そうなら、ランナーもいるし、センター返しでいく)

 安田やすだが投げた第二球は、外角やや甘めに入ってきた。俺は、その球をコンパクトに振り抜く。

 打球は、投手の横を抜け、センター前へ。二塁走者の新野にいのは、バックホームのタッチを巧みにかわし、ホームイン。

 南浦部第一が、王者・金浜かなはまから、鮮やかに1点を先制した。


 だが、さすがは名門のエース安田幸太郎やすだこうたろう。その後は圧巻の投球で、南浦部第一打線に二塁を踏ませない。


 試合は、1対0のまま、八回裏。金浜かなはまの攻撃。

 ワンナウト・一、二塁のピンチで、打席には四番で捕手の横山健太を迎える。


(この場面、どうする、ハルっち。三振を狙うか、打たせて取るか。サインをくれ)

(ゲッツー狙いだ。三浦みうら先輩を信じて、6-4-3を完成させる。初球は、外角ストレートのボール球で誘う)

 大江おおえがうなずき、外角にストレートを投げ込む。ボール。


(セカンドゴロで、4-6-3を狙う気か。なら、逆らって右中間へ運んで逆転だ。次はスラーブか、スライダーのはず)

 バッターボックスで、横山が不敵に笑う。


(――インコースのスプリット。狙いは、ショートゴロ)

 俺がサインを送ると、大江おおえが力強くうなずいた。

 第二球。横山の読みは完全に外れ、バットは泳ぐ。打球は、狙い通りショートへの弱いゴロとなった。

 遊撃・三浦みうらが、ダイビングキャッチ! 体勢を崩しながらも、二塁・新野にいのへグラブトス! ツーアウト! 新野にいのは、ジャンピングスローで一塁へ!

 ――アウト!


 鮮やかな6-4-3のダブルプレー。ベンチの高坂こうさか監督は、何度もガッツポーズを繰り返す。マウンド上の大江おおえもまた、三浦みうらを指さし、強く拳を握った。

 スコアは1対0のまま、南浦部第一が最大のピンチをしのぎ切った。


 試合終了のサイレンが鳴り響く。泣き崩れる金浜かなはまの選手たち。その姿を見て、大江おおえは、素直に喜べず、複雑な表情を浮かべていた。

 両校がホームベース前に整列し、礼を交わす。その去り際、涙を浮かべた安田幸太郎やすだこうたろう大江おおえに近づき、耳元でささやいた。


「……今度は、プロの世界で、同じチームだといいな。甲子園での活躍、期待してるぜ」


「……ああ。甲子園で、思いっきり暴れてくる。プロの世界で、またお前と勝負できる日を、楽しみにしてる」


 雲ひとつない青空の下で、二人のエースは、固い握手を交わした。

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