英雄ユリアの物語 〜復讐と希望の王国譚〜
むんむん
英雄ユリアの祈
カイとユリアは小さい頃、同じ街に住む平民同士だった。
ユリアにとってカイは、よく遊んでくれた優しい近所のお兄ちゃん。
だが国は腐敗し、税を重く課し続け、人々は苦しみ続けた。
そしてついにはカイの家族が理不尽な理由で処刑されてしまう。
その日から、カイの心に「この国への復讐」が深く刻まれた。
青年となったカイは独力で王都に攻め入り、国王を討ち、王となる。
だがそれは民のためではなかった。
腐敗の象徴である国を徹底的に壊すための、カイ自身の復讐だった。
カイが王となった国は戦火に包まれ、各地で内乱が頻発した。
ユリアの街も例外ではなく、争いに巻き込まれ、彼女は家族を失う。
かつて優しかった兄のような存在――
その手で自分の家族が殺された事実に、ユリアは泣き、苦しんだ。
「こんなのおかしい……」
ユリアは同じように家族を失った人々を支え、自然と人々はユリアを中心に集まった。
復讐や憎しみだけでなく、「これ以上大切な人を失いたくない」という想いが彼女を動かしていた。
やがてカイは「反乱を鎮圧する」として、自らの軍を率いてユリアの街にやってきた。
街を埋め尽くすカイの軍。
その前に立つユリアたちは、寄せ集めの小さな軍勢。
恐怖にすくむ大人たちをよそに、ユリアは剣を握りしめた。
やがて戦いが始まる。
訓練されたカイの軍に対し、平民の軍は次々に倒れていく。
血が溢れ、叫びが響く。
それでもユリアたちは下がらなかった。
「ここで引けば、もう未来はない」と分かっていたから。
すると、泣きながら戦いを見つめていた親を失った子供たちが、
小さな手で石を拾い、カイの兵士たちに投げつけた。
「ユリアお姉ちゃんをいじめるなぁ!」
「ここは……ボクたちの家なんだ!」
石は鎧に弾かれ、傷ひとつつかない。
それでも、その光景を見た街の大人たちが顔を覆って涙を流し、ついに武器を取り立ち上がった。
「誰かが立たなきゃ……」
「俺たちが子供たちを守らずに誰が守る!」
こうしてユリアを中心に、街の人々はひとつの軍となった。
そんな戦場を、高台から冷たく見下ろすカイ。
王の鎧を纏い、瞳には激情も悲哀もない。
圧倒的に平民軍が倒れ続けているのに、彼らは恐れず立ち上がり続ける。
血を吐き、足を引きずりながらも仲間を助けようと前に進む。
カイは長くその光景を見つめると、ふっと目を伏せ、城へと引き返した。
去り際、剣を掲げるユリアにだけ目を向け、静かに言い残す。
「王座で待つ。……そこで終わらせよう、ユリア。」
そう言うと、カイは軍を率いて退き、王城へと戻っていった。
仲間を集めたユリアたちは、街の人々と共にカイの城へと進軍する。
そこに待つのは、あの優しかったお兄ちゃんではなく、復讐に囚われた王。
壮絶な戦いの末、ユリアは城の玉座の間でカイと再び剣を交える。
かつての思い出がフラッシュのように蘇る。
二人の剣は交わり、何度も血を散らした。
そして
やがて戦いは終わりを迎える。
その結末は語られない。
ただ、人々は語り継ぐ。
「これは英雄ユリアの物語だ」と。
ユリアが、子供たちを、街を、人々を救い、守り抜いた物語として。
その勇気と優しさは、いつまでも人々の心の中で生き続ける。
やがてその想いは、新たな時代へと受け継がれていく。
まだ誰も知らない、次の英雄の物語が――
この世界のどこかで、静かに幕を開けようとしていた。
英雄ユリアの物語 〜復讐と希望の王国譚〜 むんむん @munmun__
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。英雄ユリアの物語 〜復讐と希望の王国譚〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます