第43話
Re:note
ステージの幕が静かに降りる。
けれど──拍手は止まらなかった。
それどころか、手拍子や歓声が徐々に重なり、波のように広がっていく。
「もう一度!」「まだ終わらないで!」
その声は空気を震わせるほど熱を帯びていた。
仲間たちと顔を見合わせた。
「な、なにこれ……?」
「これって……まさかアンコール?……いや!そんなことよりさっきの言葉────」
戸惑いの奥で、胸の奥がじんわりと熱くなる。
求められている。もっと、この音を。もっと、自分たちの想いを。
そのとき──
ステージ裏にいたスタッフが声をかけてきた。
「皆さん、まだ歌えますか? ……どうやら、お客さんは帰す気がないみたいですよ」
一瞬、迷う。
けれどその迷いは、後ろから届いた声に吹き飛ばされた。
「僕たちの出番じゃないよ」
振り返ると、そこにいたのは颯太。
彼は静かに前を指さしていた。
その視線の先に──
「……怜央?」
声が、かすかに震えた。
ステージ脇、照明の陰から姿を現したのは──怜央だった。
本当に、来てくれたんだ……。
抱きしめたい衝動をぐっと堪えていると、
彼はマイクを手に近づいてくる。
「今度は……俺たちの番だろ?」
その瞳に、迷いはもうなかった。
彼はマイクをそっと差し出す。
「“また一緒にやろう”って言ったのは、そっちだからな」
目を見開き、言葉を失う。
けれど、すぐに──うなずいた。
「……うん。そうだね」
隼人と明里もステージ袖に姿を現す。
懐かしい、そして大切な仲間たち。
「やっぱお前、そういうとこだけはキマってるよな」
「……嬉しい。鈴ちゃんの言葉、ちゃんと届いたから」
颯太たちは自然と後ろへ下がった。
天音がやさしく微笑む。
「そうだね、リリー。……いや鈴。今度はあなたの時間だよ」
「……うん。行ってくる」
リリーは深く息を吸い、ステージへと一歩踏み出す。
もう、迷いはなかった。
これは──あの日、果たせなかった“続き”を始めるためのステージ。
照明が再びステージを照らす。
無数の視線が、彼女たちを見つめていた。
「もう一曲だけ、聞いてください」
観客に向かって語りかける。
「これは……もう一度出会えた仲間と。
もう一度、音楽でつながるための──私たちの曲です」
そう。これは私たち4人の絆の曲。永遠に変わらないこの思い。
「忘れない。変わらない。思い出と絆を込めて。
Re:noteで──『Re:start』」
まだどこにも発表していない新曲。
私たちが、あの時できなかったことを、今、ここで。
ギターが静かに鳴り始める。
4人の音が、ゆっくりと重なっていく。
これは、奇跡のような再会の音。
そして、未来への第一歩──
──Re:note、再始動。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます