神々の大戦
蓮村 遼
さぁ、始めよう
「いよいよだな斎藤工。」
「この時が来たな山本耕史。」
闇の炎が渦巻く地獄のとある場所。2体の邪神がいる。邪神の後ろには数百~数万の魔物の軍勢が
「昨今の地上の様子は特に見るに堪えない。そう思わないか斎藤工。」
「同感だ山本耕史。ヒトが我が物顔で地上を席巻し、あたかも自分たちが神のように振る舞っている。支配する側だと思っている。」
2体の邪神は表情を変えず、お互いの方も向かず、ただ地上へ続く門を見つめ会話を続ける。
「もう一度、蒙昧無知なヒトの、無駄に発達した脳髄に刻まねばならん。真にこの世を、世界を支配する者は誰なのか。自らが如何に矮小な存在なのかを。なぁ、山本耕史。」
「あぁ。圧倒的な力でな、斎藤工。」
山本耕史と呼ばれる邪神が群衆を振り返る。各々にざわついていた魔物達の視線は山本耕史に集まり、その場の緊張が高まる。山本耕史は両眼で周囲を見渡し、その薄く笑う口角をまた少し上げた。
「同種同士下らない争いをしているヒトは疲弊している。これだけの軍勢だ、今がそのときだろう斎藤工。」
斎藤工と呼ばれる邪神も後方を振り返り、軍勢を一瞥する。無表情のまま右手に持つ禍々しい槍をゆっくりと掲げ、魔物達へ語りかけた。
「今こそ、我らが地上に顕現し、奴らに知らしめるのだ。この世を治めるは、我らだということを。」
魔物達は今まで抑えていたであろう咆哮を上げた。それはまるで、
「さぁ、門を開くぞ斎藤工。」
「やってくれ山本耕史。」
山本耕史が左手をかざすと、今まで暗い渦を巻いていた門の中心が白色に発光し始め、それが同心円状に広がっていく。白色が門の縁まで到達したとき、山本耕史と斎藤工の間を何かがすり抜けた。
何かは魔物達を次々となぎ倒し、切り伏せ、蹂躙した。
山本耕史と斎藤工はその何かを眼で追った。そして斎藤工の表情は不気味な、満面の笑みへと変わった。山本耕史が声をかけるも待たず、斎藤工はその何かへと跳躍した。
ガキン!!!
禍々しい漆黒の槍と白銀の剣がぶつかり閃光を放つ。その風圧で周囲の炎は消し飛び、魔物の残骸やまだ息のあるものも吹き飛ばされた。
斎藤工の口角はさらに吊り上がり、目元の皺は深くなる。
満面の笑みを湛えたまま、斎藤工はその何かに語り掛けた。
「やはり現れるか、地上の守護者!」
キンッ!
交わっていた刃が解かれ、岩石だらけの地獄に残響が響き渡った。そこには純白のフードを目深にかぶる、一人の男の姿があった。山本耕史は斎藤工の後を追って跳躍した。
「斎藤工、なんだあいつは。」
「気づかないのか山本耕史、奴は…」
斎藤工が名を語ろうとした時、男はそれを制止した。
「私は神です。」
男はゆっくりとフードを脱ぎながら、その鋭い眼光を邪神に放った。
「っ!!お前は、藤原竜也!!」
「久しぶりだな、山本耕史、斎藤工。地獄で何をこそこそと企んでいるかと思えば。このような軍勢を用意していたとは、無駄なことを。」
「何!」
藤原竜也は邪神を誹り、後方から襲い掛かった魔物の一体を、いとも簡単に切り伏せた。
残りの魔物達は途端にしり込みをし、じりじりと後退を始めた。山本耕史の表情には焦りがあったが、斎藤工は不気味な笑みが張り付いたままだった。
「わざわざご苦労なことだよ藤原竜也。今日は一人なのか。神のお仲間はどうした?敵地に単騎とは舐められたものだ。そうは思わないか山本耕史。」
「しかしだ、斎藤工。奴の強さを忘れたわけではないだろう。奴は地上の神の中でも最強と謳われる。この士気の下がった状態では、太刀打ちできるかどうか…。」
それでもなお、斎藤工からは笑みが消えていなかった。この場で笑っているのは斎藤工ただ一人だ。
「何が可笑しい斎藤工。恐怖で表情筋が馬鹿になったのか?」
剣の切っ先を邪神達に向け、藤原竜也は尋ねる。ふと、斎藤工が懐から何か短剣のようなものを取り出すのが見えた。
途端藤原竜也の表情が曇った。
「!斎藤工、貴様、そこまでやるのか。」
「さすがだ、藤原竜也。これが何かわかるのか。」
「な、なんだ斎藤工。これはいったい…。」
「説明してやろう、山本耕史。これは、惑星外生命体から譲り受けた呪物だ。これによって私は惑星外生命体の力が使えるようになる。この星の力では太刀打ちできない、強力な呪術だよ。」
斎藤工がその呪物を頭上より高く高く掲げると、それは光を放ち始めた。
「さぁ、始めよう藤原竜也!私たちの戦いを!」
ここに神々の大戦が開戦した。
神々の大戦 蓮村 遼 @hasutera
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