第19話

 奥の部屋に入っていくと、大きな水槽に入った二つの脳が脈を打っていた。

『倒したみたいだな……』

『ありがとう』

「お父さんお母さん!何でそんな姿に……」


 我々がこの施設を見つけた時には、もう子供が5人、培養液の中に生きていた。

 名前はテスカトリポカ、ケツァルコアトル、トラロック、チャルチウトラクエ、トナティウ、と書いてあり。

 アステカ神話の神の名前だった。

 この施設はそれを蘇らせようとしていた。

 いや、もう蘇っていたのだ。


 私達はどうにかして子供の頃から教育できないかとその子供達を育てて来た。


 テスカは無邪気に、ケツァルは大人しくて、トラロックは甘えたがり、チャルチウはおませに育ったが、トナティウは違った。

『この世界はダメだ。もう末期になっている。一度壊してやり直さないと』

『だめよ?そんなこと言わないで?』

『母さんと父さんは生きていてもらうよ?』

「私達だけじゃダメよ、みんなが住める場所にしましょう?』

 と言ってそれで終わったと思ったら、私達はこの姿に気づいたらなっていた。

 チャルチウがやったことを後悔していたが、慣れたのだろう、みんなこの姿が私達の本来の姿だと思って来た。


 トラロックだけは反対して元に戻せと言って喧嘩をしていたが、もうこの姿になってしまった私達は戻ることはできない。


 そのあとはもうトナティウが先頭に立ちこの世界をどうやって壊すかを考えていた時に、


『チヨ達がきた……大きくなったな』

『お父さん、お母さん』

『もうこの施設は終わりだわ、私達の最後の望みは貴女達が無事に帰ることよ?』

『さぁ、もう行きなさい』

「クッ、お父さん、お母さん、ありがとう」

『私達のほうだよ……ありがとう』

 “ガラガラ”と崩れて行く施設から脱した俺たちはチヨの親の墓を立てると、そこから静岡シェルターに行く。


 親方達はなんとか津波を凌いでいた様で出て来たのでよかった。


 みんなで長野に向かう。


 親方達には険しい道のりだが、もう人型化物はおらず、ただ旅をして長野に着くと、長野シェルターは半壊していたが、みんなは無事だったみたいだ。


 これから化物のいなくなった日本を復興するのは俺たちのあとの世代になってくるが、トナティウが最後に起こした地震で一から再生していくのだ。


 俺たち6人は化物の身体になっているのでいつまで生きられるかわからない。


 だが、人々のために全力を尽くす。


 それが、最善の選択だと思うから。


 人は1人では生きていけない。


 みんなで支え合って生きるしかないのだから。




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神と滅亡 あに @sanzo

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