第21話 最終話
実は…大樹と悠馬と翔太と犯人Aの4人は、この埋蔵金事件と関係のある人物だった。過去の事件を呪い怨霊となり「死」を連想させる4日間だけ、この世に現れ仕返しをしにやって来たのだった。
だが、大樹と翔太はこの世に恨みなど無さそうだ。この世に未練があり、行くチャンスがあるのならとの思いでやって来ただけだった。幽霊は人間にとって無害であるが、出くわしたら怖い。
一方の悠馬と犯人Aはこの世に復讐心を燃やし怨霊となり現れた。犯人Aと悠馬はスケジュールを立てた。
1日目父と妹美咲を殺害
2日目田村陽子さんを殺害
3日目小5殺害
4日目優衣と最高の愛を確かめ合う1日
俺は父に一度でいいから認めてもらいたくて、妹美咲にだけ向けられる愛情を取り戻したくて、必死で勉強にもスポーツにも頑張ったさ。
だが、妹は天才肌で俺が美咲の2倍頑張ったところで到底太刀打ちできない。俺は両親に褒めてもらいたくて寝る間も惜しんで頑張ったさ。
そう言えばあれは確か、俺が小学3年生のある日のことだ。祖父母がいつものようにやって来たのだが、同じ東京なので滅多と泊まって行かないのに、どういう訳か今日は泊まって行くみたいだった。
いつもだったら出来の悪い僕が我慢ならず、父が我慢できずに小言のオンパレードと決まっていたが、今日は父の小言も鳴りを潜め、そればかりか誉めそやす素振りの父に、やっと今までの努力が認められたと喜び、久しぶりの温かい家族に包まれて眠ったんだ。
だが、翌朝は日曜日だと言うのに朝方から一階が何やら慌ただしい様子。そこで…何かと思い一階に降りると、今正に妹美咲だけを連れて沖縄旅行に出かけるところだった。
それは妹美咲が、全国小学2年生算数コンクールでチャンピオンに輝いたご褒美に、俺だけ残して美咲が大好きな沖縄に出掛ける計画を前々から計画していたんだ。
俺は一階に降りて行き、余りにも理不尽な扱いに泣き叫んだんだ。
「僕も……僕も……行く!わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭待って!わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭行かないで!」
すると父が祖母に目で合図を送ったんだ。おばあちゃんが俺の体を必死で掴まえ俺が出て行けないようにしたんだ。父は出来の悪い息子にお灸をすえる為と、奮起させるつもりで、そんなことを意図も容易くできる冷徹な父であった。
まだ幼少期はその程度だったが、高校生にもなると能力は尚更克明に現れてくる。優秀だが冷たい父は優秀でない人間を見ると我慢できないらしく徹底的に見下した。それはそのまま母に向けられた。
母は両親が公務員で短大時代に旅行先で父学と意気投合して付き合いだした。確かに美人だったが、ただそれだけで平均的な女性だった。
悠馬は知能といい美貌といい母譲りだったが、一方妹美咲は父の遺伝子をそのまま引き継いだ超エリート。どれだけ血を吐くほど頑張ったところで叶う訳が無いのに、父は自分が優秀なので平均的な母と悠馬が許せないのだ。
「美咲は水木家の血を引いて天才だが、悠馬は平均的な今井家の血を引き到底弁護士にはなれそうにない!お前が……お前が……バカだからだ。フン!」
「ゥウウウッ( ノД`)シクシク…」
「お母様をいじめるな!💢💢💢」
「お前が出来が悪くてこんな事になっているんだ。どうして美咲のようになれないんだ!このバカが!母の血を受け継いだからだ。ふっふっふ……」
父はいつもそうだった。血も涙もない冷血の二文字が顔にクッキリ書いたように表情に出る父だった。
そして……自分が優秀過ぎるので普通の人間は軽蔑にしか値しない。それをモロに顔に出し口に出す父だった。
上から見下ろして下等な人間をあざ笑う氷のような目で、ふっふっふ……と笑う父が何よりも嫌いだった。
😇 🪷 😇 🪷 😇 🪷 😇 🪷 😇 🪷 😇 🪷 😇 🪷
愛情に飢え枯渇した心を埋めてくれるのは他の誰かに愛される事だ。俺は家族には愛を得ることは出来なかったが、女子たちからはバレンタインには山ほどのチョコレートを貰っていた。
愛に飢えた俺は女子で穴埋めしようと考えた。その時に真っ先に浮かんだのが優衣だった。
俺は4日間だけ、この世に戻って来れたが、最後の1日は愛する優衣に会うために時間を使おうと思い、優衣の元に向かった。
優衣はデパートでショッピング中だった。何と…優衣は悠馬が5日前に亡くなったことを知らない。
「どうしたの悠馬?」
「俺さ……俺さ……お前に話していない事が……」
「何よ?言ってよ」
悠馬の情熱が伝わったのか、デパートが一瞬で霊力で辺り一面に花が咲き乱れ、美しい自然の森と湖と花園が現れ、ロマンチックな演出が施された。
「お前が……お前の事が……世界中で一番好きさ💝💖💓」
「わーすごーい!いきなり世界が変わり美しい森と花園になったのね。ロマンチックね。ふっふっふ……私もよ悠馬の事が世界中で一番好き💝💖💓」
2人は花園で抱き合い熱いキスを交わし、今正に絶頂の幸せに浸っている。
どこからともなく翔太の声が聞こえたと、その時ふっと下を見ると谷底は真っ赤に燃えた血の池地獄になっていた。
「どうして……どうしてなんだよ……悠馬と会う前までは他にも何人も付き合っていたじゃないか。どうしてそんな恐ろしいことが出来るんだ。俺が優衣を全力で愛していればきっとそのうち、俺だけのものになってくれると思い耐えていた。そして……俺とキスまでしておいて、俺を夢中にさせておいて……どうして分かってくれないんだ。俺がこんなに優衣を愛しているのに……何で……何で……分かってくれないんだよ!よくも……よくも……俺と言うものがありながら……ふっふっふ……許せない!👹💢💢💢」
「翔太が一方的にキスして来たんじゃない。ただそれだけの事。何人もって……それは、お友達としてよ。可笑しいこと言うのね。ふっふっふ……私が愛しているのは世界でただ1人悠馬だけよ」
その時だ。翔太が優衣の手を掴み一気に血の池地獄に引きずり落とした。
「キャ――――――――――――――――――ッ!」
愛欲地獄とは恐ろしい。くわばらくわばら
おわり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます