第10話 女子高生
利信という男はどうしようもない男だ。自分の欲望の為には人を殺害する事に何のためらいもない男だった。
それでは150年前に生きた埋蔵金泥棒の利信と、現在大学生の悠馬にはどのような関わりがあるのだろうか?
徐々に明らかになる真実。
悠馬に降りかかる事件の数々は何を意味しているのだろうか?
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利信は晴れて愛する若くて美しい美智子と結婚できたが、夜な夜な枕元に現れる夕花の怨霊に悩まされている
※怨霊:自分が受けた仕打ちに恨みを持ち、たたる霊のことを言い、悪霊の一種ともされる。死後に落ち着くところのない霊魂である。 古くから日本では怨霊が憑依することによって、疫病や天変地異など社会に甚大な被害がもたらされると信じられてきた。昔から霊魂が、生きている人間や社会に対して災いを与える怨霊として恐れられて来た。近年はこの世に怨念を抱き成仏することの出来ない霊魂が、恨みの矛先である相手に危害を加えるような存在を怨霊として語ることが増えている。
このように怨霊とは、自分が受けた仕打ちに並々ならぬ恨みを持ち、夕花もまた利信の最も愛する美智子に憑依することによって恨みを晴らそうとしたのだろう。
更には夕花の怨霊が憑依することによって、恐ろしい現実に直面する事となった。
そうなのだ。古くから日本では怨霊が憑依することによって、疫病や天変地異など社会に甚大な被害がもたらされると信じられてきた。
疫病とは、はやりやまいの事である。
疫病が流行したと考えられているものには次のようなものがある。痘瘡(天然痘)・麻疹(はしか)・赤痢・コレラ・インフルエンザ・癩・結核・梅毒・コロナウイルスなどがあげられる。こうした病気は元々特定の地域の風土病であったが、文明・文化・社会の発展と異世界との交流拡大、往来に伴い、これまで病が存在しなかった地域にも広く伝わり、世界的に流行するようになったと考えられている。
天変地異とは、暴風、雷、雨、日食、月食、地震、洪水などをいう。
人間の怨霊とは非常に恐ろしいもので、利信をあざ笑うかのように、この後恐ろしい事件が起こる。
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ある8月の昼過ぎから夕方にかけて異常事態が起こった。
天気が急変して、強い雨や突風が巻き起こったかと思うと「雷」が発生し、空が薄紫に急変し稲妻が…怒涛の如く荒れ狂って。ものの24時間で100回の数の落雷が落ちて火事が発生した。
急に空が真っ暗になったかと思うと、ピカリと空が光り。紫の天から無数のおびただしい蛇行線を描きながら光の線が無数に空に走り、やがてその蛇行線は「日光繊維」の空に集中的に現れ、瞬く間に不気味な蛇行を描きながら「日光繊維」に落ちて行った。
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「日光繊維」は瞬く間に炎の海と化した。不思議な話だ。「日光繊維」だけが集中的な被害に遭い、近所には何の影響も出なかった。不思議な事もあるものだ。
更に不思議なことに利信の邸宅は「日光繊維」から200Ⅿ先に建っていたのだが、そこだけ集中的に狙ったかのように雷が無数に落ちて家族諸共亡くなってしまった。
利信は「日光繊維」の社長室にいたので落雷をもろに受け、焼け死んでいた。そして妻美智子も焼死体で見つかった。
だが、利信と夕花の息子信幸だけが、行方不明となっていた。ひょっとして夕花は死んでも我が子だけは守りたくて助けたのかもしれない。
それにしても怨霊とは恐ろしいものだ。怨霊が憑依することによって、疫病や天変地異など社会に甚大な被害がもたらされると信じられてきたが、正に本当に起こってしまった。
誠に残念なことだが、利信の死は自業自得だが、妻の美智子は何の関係もないのに儚い一生だった。僅か23歳でこの世を去った。
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それでは…埋蔵金泥棒利信の息子信幸はどこに消えたのか?
あの日の落雷が「日光繊維」本社と社長宅に執拗に迫り、雷が落ちて大火災となってしまったが、あの日の事を再現してみよう。
5代前に誕生した利信の息子信幸は丁度3歳でいろんなものに興味が出る年齢だった。
母美智子が今まで感じた事のない真近に迫った雷雨(らいう)の轟音と、一度たりとも見た事のない雷雨の脅威をまじまじと見せつけられてしまった。
それこそ……家の中にいると、異常なまでにカラフルな色と音が荒れ狂い、不気味にピカピカゴロゴロ光ったり音を立てたりして、どこか分からない…それこそ自分の身近に迫り来るかもしれない危機感で押しつぶされそうになりながら、外に逃げることも出来ない。そんな不安な気持ちを表現するなら、夕暮れの空一面に故障した電飾イルミネーションが、赤や紫、黄色に青に白と爆発して「ピカピカゴロゴロ」目も開けていられないほどの閃光の激しさが、迫ってくるさまを連想して恐怖で押しつぶされそうなのだ。
どういう事かと言うと、空は荒れ狂い紫になったかと思うと落雷の光で空は一瞬真っ白になるが、直ぐに真っ暗闇になり、それでも…ころころ天候は変動して、一瞬夕日でオレンジに染まったかと思うと、容赦なく雨と落雷に変えてしまうのだが、それこそ蛇行線を描きながら黄色い光が凄まじい勢いで落ちていく。真っ暗だった空はピカピカゴロゴロ音を立てながら、ピカリと光った瞬間空を一瞬で真っ白に変えてしまう。
現実の空模様はこのような様子なのだが、恐ろしくて外に出れない美智子はいらぬ空想をして恐怖で怯えおののいている。
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一方の3歳の信幸の考えは全く違っていた。恐怖に怯えおののいているのは母美智子であって、信幸にすれば誕生してまだ経験したことのないカラフルな空と光と騒音に、ウキウキワクワク一気に外に出た。
3歳くらいは好奇心の塊だ。これが時には恐ろしい事故に繋がるのだが、この時はこの行動が正解で只1人助かっていた。
だから…信幸だけは生き延びることが出来た。両親利信と美智子は亡くなったが、祖父母はまだ元気なので祖父母の下で成長して「日光繊維」を引き継いだ。
だが、「日光繊維」も紆余曲折を辿っていった。日本有数の繊維会社に成長して日本中に工場を建設していった。
だが、1934年 ‐ 富山工場を廃止。
1935年 - 広島工場を廃止。
1949年5月 - 東京、大阪、名古屋各証券取引所に上場。
2004年2月 - 「日光繊維」をSOB銀行に売却。
2006年1月 - 札幌、名古屋、福岡各証券取引所での上場を廃止。
「日光繊維」は売却されてしまった
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結局利信の子孫は不幸続きで没落していったのだろうか?
あれだけの悪党利信だったが、子孫は利信の悪行の数々に不幸続きだったと聞いている。
実は利信の息子信幸は実は利信と先妻夕花の間に誕生した息子だったのだが、夕花が息子信幸をあの落雷の中、びしょ濡れになって逃げ惑う様子に耐えられなくなって、守護霊となり助け出していたと聞くが?
夕花の息子信幸はこの後、思わぬ人生を歩んでいくことになる。
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「それは……それは……違います。あの時、実は…犯人がしゃがんでいて暗かったからハッキリと分からなかっただけです。誰かがしゃがんで足を持って下に真っ逆さまに突き落とそうとしたので、私が慌てて引き留めに入ったのです。そしておばあちゃんの体を懸命に支えようとしたが、一歩間に合わず止め切ることが出来なくて、真っ逆さまに下に落ちてしまったのです」
そうなのだ。あの正義感に溢れる女子高生は、あの田村陽子さん75歳が、何者かによって橋の上から下に突き落とされた午後9時過ぎに岡崎市の「鳥川ホタルの里 」付近の橋の付近を彼氏と蛍見物に来ていた。
その時不穏な行動の男に出会ったのだ。そして…慌てて近寄り助け出そうと奔走したが、一歩間に合わなかった。どうも…この少女こそ利信の子孫だというのだが……。
一体どういうこと?
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