第2話 生首



 小5男児は祖父の家に行くと言って昼過ぎに家を出た後、ある男と偶然出会った。男は男児に対し「青色に黒と黄色に赤の超綺麗な蝶々あげるからついておいでよ」といって近所の高台に誘い出し、その場で絞殺して側に有った廃墟に遺体を隠した。


 次の日、その男は前日の殺害現場の廃墟を訪れ、男児の遺体の首を金のこぎりで切断、頭部のみ家に持ち帰った。


 小5男児がいつまでも帰って来ないので親が心配して警察に通報。小5男児の行方不明事件として警察が捜索開始。


 翌朝、被害男児の頭部が愛知県岡崎市✕✕町の空民家の庭で発見された。目は見開かれていた状態だった。


「ふっふっふっ!はっはっはっは!ああああああああ!興奮する」

 快楽殺人を犯した犯人の多くは、子どもの頃に猫など動物を殺した経験があるそうだ。


 🌃✨ ✨ ✨ ✨ ✨🌃


 朝の東海テレビのワイドショーでアナウンサーのいきり立った金切り声が、画面越しに伝わってきた。

「昨日の午後9時過ぎに岡崎市の「鳥川ホタルの里 」付近の橋の上から田村陽子さん75歳が、何者かによって降下に突き落とされました。今現在も懸命な治療が行われていますが、予断を許さない状況だと言われています。全く酷い話です。あんな丁度「鳥川ホタルの里 」から帰路につく車でごった返している状況下、よくそんな大胆な行動がとれたものです。更には満点の星と、月明かりと、蛍の灯りに照らし出され、ハッキリと突き落とされる場面をこの目で見たという住民の訴えも判明しました。そして…何と…その映し出された人物とは女子高生か、女子大生だったというのです」


「ええええええええぇぇええええええっ!😱どういう事よ。俺たちが昨日見に行った場所じゃないか?」


 どうして高齢の女性を橋の上から突き落とすような、卑劣な真似をしたのかと言う事だ。

 防犯カメラから車ナンバーが割り出され、怪しい人物を片っ端から当たって見た。


 すると早速その人物と一致しそうな女子に巡り合うことができた。


 その女性は現在高校3年生で悠馬の近所に住む女子生徒だという事が判明した。


 早速山々コンビはその少女が住む自宅に直行した。


 ”ピンポン“ ”ピンポン“ ”ピンポン“ ”ピンポン”


「どちら様ですか?」

「警察のものです。お嬢さんをお願いします!」

 

 高校生の女子が玄関先に現れた。

「どうして、田村陽子さんを橋から突き落とすような卑劣な真似をしたんだい?」


「それは……それは……違います。あの時、実は…犯人がしゃがんでいて暗かったからハッキリと分からなかっただけです。誰かがしゃがんで足を持って下に真っ逆さまに突き落とそうとしたので、私が慌てて引き留めに入ったのです。そしておばあちゃんの体を懸命に支えようとしたが、一歩間に合わず止めきることが出来なくて、真っ逆さまに下に落ちてしまったのです」


「その犯人の特徴を教えてくれたまえ!」


「それが…目出し帽だったので全く分かりません。まるで……忍者のような素早い身のこなしで、ましてや夜なのでしゃがみこんでいたので全く分かりません」


 そこで警察も昨日の夜9時過ぎの現地の状況を、事細かに述べていた証言者の元に向かい、もう一度聞き取りを行った。


「昨日の夜の状況だが、高校生の女子が言うには落としたのではなく、慌てて近付き落ちないように咄嗟に捕まえたのだと言うのですがね?」


「ああああああああ!確かにそのようにも見受けられました。押さえた瞬間に下に落ちて行きましたね」


「それでも…そのおばあさんは何か……人から恨まれるような人物だったのでしょうかね?」


「本当ですよね。きっと何かあると思います」

 こうして…山々コンビは、予断を許さない状況化の高齢女性田村陽子の息子を当たる事にした。


 その息子は病院で母の付きっ切りの看病の最中だった。そこで…午前の診察も終わった誰もいない待合室で話を聞くことにした山々コンビ。


「田村陽子さんの息子さんですね。少しでも早く憎き犯人を捕まえるためにはスピードが肝心です。お話をお聞かせください。お母さんは誰かに恨まれるような事はありましたか?」


「……実は…母はアパートを経営していまして……それで…滞納者には厳しい母でした」

「結局アパートの家賃滞納が原因だったのだろうかと、思うのですね?それでは……滞納している人物を教えて下さい」


「ああ!柳田辰夫さんです」

 こうして…山々コンビはタムラハイツに向かった。


 ”トントン“ ”トントン“ ”トントン”

 ”トントン“ ”トントン“ ”トントン”

 ”トントン“ ”トントン“ ”トントン”

 どれだけ戸を叩いても応答がなかったので改めて出直すことを誓った2人だった。柳田辰夫はタムラハイツから姿を消した。その足取りを追う山々コンビ。


 だが、懸命の捜索もむなしく足取りが全くつかめない。柳田辰夫はどこに消えたのだろうか?


 🌃✨ ✨ ✨ ✨ ✨🌃

 

 

 わずかの間に悠馬の周りで起こる不可解な事件だったが、大学はやはり生まれ育った場所に帰りたくなった悠馬の姿は現在東京にあった。


 そうなのだ。悠馬は慶應義塾大学経済学部へ進学。


 それでも…悪い事ばかりではない。進学して早々にストリートダンスサークルで知り合った、同じクラスの優衣と親しくなり交際がスタートした。


 優衣は5歳からダンススクールに通っていたらしくダンススキルが非常に高い。憧れの眼差しで優衣を見詰めていたが、そんな憧れの対象から声を掛けられたのが最初の出会いだった。


「ねえ君。私のヒップホップダンスばかり見てるけど……君は踊らないの?」

「僕ダンス経験ないけど……ちょっとやって見たくなってダンスサークルに参加したんだ」

「じゃー私が教えてあげる」

 このようにして徐々に優衣とは親しくなっていった悠馬。やがて2人はデートする機会も増えて行った。

「今日は食事して映画にしようって決めていたね」

「何食べる?」

「アルバイト始めたので俺おごるよ」

「本当にやったー!じゃー今日はもんじゃ焼き」

「いいね!」


 こうして美味しい食事を堪能して映画館に移動した。その途中で悠馬は度々感じる人の気配に、こらえ切れずに話し出した。


「優衣俺気になることあるんだけど……」

「何があるって言うの?」

「な~んか誰かにつけられてる気がするんだよな~」


 実は…この優衣には他にも付き合っている彼氏がいた。きっとその彼が付け回しているのかもしれない。


 ある日2人は湘南にドライブに出かけた。

 それは7月のある日の事だ。


 湘南といえば、青い海と白い砂浜由比ヶ浜が有名だが、若い男女が海を泳いだり、海の家で食事をする姿を多く見かけ、有名どころではサザンの音楽もかかり、他エリアと比べて人も多いので活気付いている雰囲気だ。夏は日差しも強いので、砂浜にパラソルやテントの花が一面に咲き誇っている。


 

 一方の七里ヶ浜は、観光スポットや海が見える絶景スポット、カフェなどもある人気の名所。雲の中から現れた夕日が江の島に沈み、空と海が紅く染まり、鮮やかなサンセットタイムとなる~七里ヶ浜


 週末には夕日を見ようと観光客が多く訪れる。サーフィンやSUPなどマリンスポーツを楽しめるスポットとして人気を集めているが、何と「日本の渚100選」にも選ばれている七里ヶ浜。



 そして…ある時は東京スカイツリーの展望台からの階下に広がる夜景の見事な事。正に夜の東京がダイヤモンドシティーに変わり、美しい夜景を一望できる。そして…その後はお洒落なカフェ。


 更には2人だけのホームパーティ。家で焼肉パーティーとか、スイーツパーティーとか。


 そして…普段行かないようなデートスポットを巡ってみる。神社や仏閣、キャンプに釣りなどなど。遊園地に朝から行ってアトラクション全制覇するとかね。また、図書館に行き、好きな本を読みながら次に行く場所を探したり。


 キャンプや釣り、山登りなど、共通の趣味が増えて行った。こんな夢のような日々の中とんでもないことを聞かされた悠馬は只々驚いている


 悠馬は唯一の友人翔太から「俺も優衣と付き合っている。同時に多くの男性と交際する女だ。他にも何人も付き合っているらしい」と聞かされ、衝撃を受ける。

 それ以降、麻雀、ダンスと浪費癖が激しくなって生活が堕落し、自殺も考えるようになった。


「おじいちゃん俺と言うものがありながら、同時に多くの男性と交際する女って酷いと思わない?」


「本当だなあ。俺だったら絶対に許さない」


「どうするのさ?」


「ふっふっふっ……許さないさ!絶対に……ふっふっふっ」


 精神異常者はひょっとしておじいちゃん?







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