第3話

第二章:欺瞞の王者


社会人になってからの慎太郎は、営業職で結果を出せずにいた。


「慎太郎君、焦らなくていいよ。地道にやっていけば、必ず結果は出るから」

上司の山田が励ました。


「無理な営業はしちゃだめだ。お客さんとの信頼関係が一番大切なんだよ」

先輩の田中が忠告した。


だが慎太郎の心は、彼らの善意とは正反対のことを考えていた。


(地道だと?信頼関係だと?そんなまどろっこしいことをやってる間に、俺の人生は終わってしまう。俺は今すぐ、みんなから羨ましがられる存在になりたいんだ)


「時間をかけてる場合じゃない。手っ取り早く成果を出すんだ。今だよ、今!」


名前を変え、口先だけで人を操り、大金を得ていった。

高級車、高級マンション、高級な女性たち。

すべてが、慎太郎の虚栄心を満たしていた。


「見てごらん」

死神が指を弾くと、もう一つの人生が映る。


正攻法で努力し続けた慎太郎の姿。

地道な営業で信頼を得て、小さな会社を経営していた。笑顔で家族と並ぶ写真がそこにあった。


「こっちは"幸せな人生"。でも君は、『今すぐ特別になりたい』という欲望に正直だった。嘘も、騙しも、すべて君の本音だった。君が選んだのだ。」


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第三章:歪んだ善意


慎太郎は、詐欺で得た金を一部、児童養護施設に匿名で寄付していた。


ある日、養護施設の職員から電話があった。


「もしもし……匿名でご寄付いただいた方でしょうか?お気持ちは本当にありがたいのですが、このような形でのご寄付は、私たちとしては受け取りかねます。みんなもお礼したいと言ってます。遊びに来ていただけませんか?」


慎太郎の心の中は、こんなことを考えていた。


(顔を出せば、俺の正体がバレるかもしれない。でも、この金を寄付することで、俺は少しでも『いい人』になれる。罪悪感も少しは軽くなる)


「いや、匿名でいいんです。俺のことは気にしないでください」


「これも君らしい選択だった。善意ですらも、自分のためだった。でも、それが君の正直な気持ちだったんだろう?」


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