生え際

脳幹 まこと

プロローグ


 嗚呼、生え際が怖い。

 などと言ったら、聡明な皆さんのことだから、恐らく冷笑するに違いないだろうが、それでもやはり私は生え際が怖くて敵わないのだ。


 この文書には、私が生え際に恐怖を覚えるに至った一部始終を書き残そうと思っている。


 なぜこのようなものを書こうと思ったのかは、当の本人たる私にもてんで想像もつかないことだ。この時にすらじりじりと迫りくる生え際に対し、私はどう対処することだって出来ない。


 言ってしまえば、これは遺書なのだ。


 カミへの懺悔。そして責め苦たる生え際に対し、迎えいれ、共に地獄へ落ちんことを覚悟するための、私の最後の意思表示なのだ。


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