MoA:Rank1「vsレッド」

ごきげんよう、ドミナント。

いよいよ“MoA”、その頂点に立つための闘いです。


Rank1、識別名“レッド”

またの名を竜化体“ハスラー・ワン”


彼女は滅亡後の世界にて、ギルドランキングの一位に座す最強の存在であり、その理外にも等しい戦闘能力は、“例外”に最も近いとされています。


以上となります。

ドミナント……あなたが私の意に添うことを期待しています。

















『聞こえますか、マイグラント。

 こちらの準備は整っています。

 Rank1、レッド……

 想像を絶する強敵ですが、必ず……

 必ず、勝利しましょう。

 あなたは、まだ現世でやることがあるはずですから』






























 エンドレスロール シャングリラ・ファンタジア

 無限の暗黒に包まれた空間、その只中に浮遊する巨大な足場。そこで目覚めると、眼前には女が立っていた。真紅の長髪を棚引かせる、冷酷な表情を貼り付けた女が。

「待っていたわ、怨愛の修羅」

 レッドは圧倒的な存在感を放ち、言葉を紡ぐ。

「あなたのことは知っていたわ、淵源の蒼光を通してね」

 その言葉に続くように、彼女の周囲で蒼光粒子が沸き立つ。

『彼女は私が見初めた例外イレギュラー候補……白い鳥の役割を担うものです。

 尤も、正史では人類種の天敵に敗れましたが』

「セレスのことはまあ構わないわ。

 あの時は私も本調子じゃなかった」

 レッドの全身が炎に包まれ、伸ばした右手に真紅の長剣が握られる。

「死んでもらうわ、私のために」

『フィリア、ここは邪魔無しで行きましょう。あなたの信じた白い鳥を、見守りませんか?』

 シルヴィアの牽制に、フィリアが続く。

『マイグラント……

 ええ、わかっています。

 あなたは、勝つ。

 それだけは、揺るぎない真実です』

 こちらが頷き、構える。レッドは笑み、右腕を掲げ、全身の炎を逆巻かせてから振り下ろす。

「最後に残るのは私か、あなたか……

 この戦いが終われば、自ずとわかることだわ」

 両手で長剣を掴み、掲げ、一瞬力を溜めてから振り下ろし、巨大な炎刃を飛ばす。左への瞬間的ブーストで避けると、即座に横薙ぎに繋げて炎刃を飛ばし、こちらも上昇で避ける。そこから空間魔法を使った瞬間移動でこちらの上を取り、全身をしならせて強烈な兜割りを放つ。再び左への瞬間的ブーストで避け、着地した彼女へ左肩の二連グレネードキャノンで反撃する。着弾とともに淵源の蒼光が弾け飛び、通常砲弾を遥かに上回る高威力の爆発で削る。あちらは瞬間移動で後退し、更にそこから一歩下がって長剣を構え、空間に固定された縦向きの斬撃――斬閃を生み出し、自身の振りで喚起されて起動し、大量の斬撃をばら撒いて消滅する。明らかに当てに来る動作ではなく、軽く避けながら右手の二連アンダーバレルマシンガンを連射していく。今度は実弾とレーザーではなく、赫々たる炎と淵源の蒼光をそれぞれ球状にして射出している。レッドは銃弾を長剣で弾き返し、三度目の弾きで強く動いてから即座に瞬間移動し、着地したこちらを狩るように大振りで薙ぎ払う。なおもこちらが間合いを維持して後方ブーストで回避し、レッドは左腕に大槍を生み出しながら斜め後方に飛び出し、それを投げつける。右に切り返して避けるが、大槍が突き刺さった地点から衝撃波が地を走ってこちらを拘束し、間もなく大槍が爆発して追撃する。着地したレッドが強く踏み込みながら長剣を突き出し、左腕の強化パイルバンカーの外装で切っ先を凌ぎながら、左蹴りで突き飛ばし、右肩の大型キャノンから生命エネルギーを転化し、赫々たる炎と淵源の蒼光を混ぜ合わせた衝撃波を指向性を持たせて射出し、直撃させて一時的に炎の鎧を全て剥ぎ取った上でダメージを与える。

「流石に、――の審判を超えただけはあるようね」

 恐らく名前を読んだのだろう部分だけが不自然に飛び、レッドは立て直しながら炎の勢いを取り戻す。

「けれど、その程度で覆るのならば……怨愛の修羅など、この世に居ないのだわ」

 彼女は構え、今度は大量の斬閃を生み出す。更に左半身を引いて居合抜きのように構え、大気が震えるほどの力の高まりを成してから一閃し、巨大な斬撃光線を射出する。上昇で間に合わせるが、設置された斬閃が次々に起動し、直撃こそ避けるものの弾道を遮られることで射撃による反撃を封じられており、動作を終えたレッドは炎刃を二発飛ばし、こちらの回避に先回りして瞬間移動し、短い動作で居合抜きを見せて球状に小さな斬撃を大量に生み出す。振り抜かれる刀身を咄嗟に踏んで飛び退き、斬撃の只中にグレネードを撃ち込んで暴発させ、続いてチャージしたマシンガンでブレードを形成して前方に詰めながら斬りつけ、最後にチャージした強化パイルバンカーで打突を繰り出す。ブレードまでは通るが、最後の一撃でレッドは自身の周囲の空間を歪めて隙を潰し、瞬時に着地して避ける。着地したレッドへグレネードで攻撃し、即座に炎刃で迎撃されて中途半端な距離で爆発し、その爆風に紛れて急降下しながらマシンガンを連射し、レッドは右腕一本で長剣を振り上げ、巨大な炎の壁を作ってそれを弾く。こちらはそのまま突っ込んでブレードで壁を切り裂き、チャージした強化パイルバンカーを差し向ける。レッドは既に構えており、突き出た撃針を長剣で弾き返し、よろけたこちらへ渾身の横薙ぎを振る。刃が届く瞬間に胴体部から三種のエネルギーを混ぜた衝撃波を解放し、レッドは振りを中断するために空間魔法によって瞬間移動を成そうとするが、衝撃波の影で再チャージした強化パイルバンカーでレッドの胴体を撃ち抜き、後方へ激しく吹き飛ばす。取り落とした長剣が地面に刺さり、レッドは右手を地面に打ち込んで堪える。

「小細工では物足りないようね……」

 レッドは立ち上がり、苛つきを隠さずに土埃を払う。

「教えてあげるわ、誰が覇王に相応しいかを」

レッドは自然に浮き上がり、自身を抱くように両腕を交差させ、顔を埋める。力の嵐の中でレッドの双眸が輝き、一瞬姿が完全に消える。

「竜化……!」

 力の嵐を引き裂きながら、竜化したレッドがその姿を現す。翼と前脚が合体し、翼端から豪壮な関節剣のような副尾が二本棚引く真紅の竜となった彼女は、前脚を大きく開いて咆哮し、濁った金色の瞳を輝かせて着地する。

「ここがあなたの墓標よ」

 副尾がカラカラと軽い骨の音と、甲高く小さく纏まった金属音を同時に撒き散らす。竜の中でも大柄な肉体と、まるで重装備の騎士のような風貌が、凄まじい圧力を放つ。

『くっ……怨愛の修羅にも比肩するほどの凄まじい出力です……!』

『レッド、そのまま彼を倒してください。それで、“MoA”は終了です』

 フィリアに続いてシルヴィアが口走り、レッドは鼻で笑って続ける。

「あなたと私の真剣勝負に、観客は要らない」

 レッドが全身から闘気を沸き立たせ、強力な空間干渉を放つ。

『これは……!?通信を締め出されっ……』

『どういうつもりですか、レッド!』

 フィリアとシルヴィアの通信が纏めて途絶え、レッドは続ける。

「煩いのだわ」

 短く告げ、こちらへ視線を向ける。

「スッキリしたわね。あとは……私たちが決着をつけるだけ」

 右前脚を振り下ろし、副尾が続いて打ち付けられ、風切音とともに重量で刻みつけ、こちらの回避と同時にしならせて地面を捲り上げながら戻し、軽く左前脚を振って返し、チャージしたマシンガンで弾いてから飛んで避け、両前脚に力を凝縮して叩きつけ、前方の広範囲を闘気で爆破して追撃する。強力な余波で煽られ、怯んだところへレッドが前に踏み込みながら右前脚副尾による斬撃を叩き込み、副尾を外側に丸め込んでこちらを絡め取る。左副尾も即座に絡めて締め上げ、力を吸い上げる。強引に胴体部からエネルギーを過剰に生成し、殆ど暴発のような形で解放することで副尾を引き千切りながら脱し、フルチャージした強化パイルバンカーから撃針を射出しながら反動で強引に離脱し、レッドは右前脚で撃針を弾き、副尾を復活させながら展開し、左右二本ずつ、合計四本の副尾を見せながら、身体の各部から眩い蒼炎を放出し始める。

『聞こえ……ますか……マイ……グラント……

 彼女の……放つ……炎は……

 真炎と……いう……特殊な……』

 ノイズ混じりのフィリアの声が聞こえなくなり、レッドは右前脚に力を凝縮して振り抜く。副尾の通り過ぎた軌道上に猛烈な闘気の波濤が迸り、こちらは回避しながら胴体部のエネルギーを限界を超えて増幅させ、パワードスーツの装甲全体を展開して蒼光粒子を放出する。そのまま右肩の大型キャノンを発射し、レッドの左前脚からの闘気波と激突し、大爆発を起こして全速力で突っ込みながら上を取ってマシンガンの連射を叩き込み、レッドはすぐに反転しながら一歩引いてから全身を使ってサマーソルトを繰り出し、闘気を薄く飛ばして圧を掛けてから反転して振り下ろし、咄嗟の後退から重ねられた副尾が闘気を爆散させ、こちらもエネルギーを絞り出して大型キャノンで迎撃し、フルチャージした強化パイルバンカーの撃針を射出し、レッドの左眼を貫き、連鎖爆発を起こす。赫と蒼の爆風が巻き起こり、頭部の甲殻を破砕して剥離させながら衝撃で地面まで叩き落とす。重ねてグレネードキャノンを放ち、それを追って全速力で突っ込みながら、チャージしたブレードを構える。レッドは副尾を戦慄かせながら闘気を練り上げ、振り抜いて地面を叩き、前方へ最大威力の闘気爆発を引き起こす。全身から衝撃波を発して相殺しながら爆発の中を突っ切り、ブレードで首を切り落とす。止めにもう一度強化パイルバンカーをフルチャージで叩き込み、連鎖爆発とともに彼女の体内のエネルギーが行き場を失って弾け飛び、凄まじい閃光が迸る。

「あなたのほうが……優れて、いたのね……」

 竜化したまま四肢がもがれ、レッドは空中で灰になりながら浮遊している。

「それだけの力が……私にも……欲しかった……」

『竜化体“ハスラー・ワン”、識別名“レッド”の撃破を確認』

 レッドの沈黙と同時に、フィリアの声が鮮明に聞こえる。

『お疲れ様でした、マイグラント』

 パワードスーツが元に戻り、粒子が消え去る。

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