第2話 止血

翌朝西島は仕事のために駆け足で病院に向かっていた。

その道中でも何かしら起こったがほとんど気にならなかった。

気になったことと言えば、どんなに止血用のガーゼで止血しても止まらなかったこと。

仕方なくガーゼで止血をし上から包帯を巻いた。

それでも血はにじみ出てくる。

(早く病院に行って止血しなければ…)

腕を心臓より高く上げながら病院へと向かう。

ポタポタと血が腕から垂れている。

止血しても止まらない。

道に俺の血が垂れている。

急いで病院に駆け込んだ。

何人も看護師に会うけど何も言われない。

包帯から血がにじみ出て垂れているのに…

西島は処置室へと駆け込んだ。

看護師も皆気づいていない感じだった。

「西島先生、お休みですかね…?」

看護師同士の話す声。

(いやいや、ここに居るぞ。)

その看護師に今日会っている。いやさっき会った。

しかもいつも一緒に働いている看護師だ。

「佐藤先生もお休みですかね…」

(佐藤……武。)

武の苗字は佐藤。

つまり武も来ていないもしくは…見えてない。

西島は処置室で止血しているが一向に止まる気配など無かった。

むしろさっきより血がドバドバと垂れ、処置室の床が真っ赤に染まった。 

貧血にならないだろうかと言うほどの量。

いやむしろ出血死になりそうな量だ。

「斎藤さん…縫合糸持ってきて」

西島は同僚の看護師に叫ぶ。

斎藤と言うのはいつも一緒に働いている看護師。

「…」

斎藤さんは反応がなかった。

だがニッコリと笑っている。

そのままどこかに行ってしまった。

顔も名前もお互いに知っている。

さっき噂をしていた看護師とは別。

むしろさっきの看護師より仲が良い。

でも今はそれどころではない。

何をやっても止まらない。

清潔なガーゼで止血を試みるがすぐに真っ赤になる。

包帯を10回ぐらい巻きやっと血は垂れなくなった。 

西島は処置室のパソコンを使って貢納学園を調べた。

その貢納学園は20年前、放火で燃えたらしい。

死亡者は約300人学校の生徒は300人。そう全員死亡した。

よくよく調べるとそこには死亡者名簿が書いてあった。 

斎藤 真田

斎藤 綾香

斎藤 明。 

この3人の名前に目が止まった。

斎藤 明とは仲の良かった看護師の名前。

斎藤さんからは両親の話は聞いたこと無かった。

けれどいるとは言ってなかった。

(まさか…)

でも変だ…もし斎藤さんだとするともうこの世には居ない。

何回も目をこすり画面を見た。

目をこすると目に血が入り視界が真っ赤になる。

(これはやばい…)

こんなに視界が真っ赤でも斎藤さんの名前は濃くはっきりと見えた。

サイトの下の方まで行くと、佐藤 武の名前が書いてある。

しかも武の字もはっきりと見えている。

(なんで武も…)

処置室の外から何か音が聞こえる。

トコ、トコ、トコ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る