第2話 呪詛と夢とハムスターの霊

夜の町田駅から徒歩10分。

居酒屋とスピリチュアルサロンが混在する路地裏、看板にはこう書かれている。


【くずはら美麗 占術館】

“あなたの未来、ネタバレします。”





「先生、お願いですっ!この夢の意味を教えてください……!」


泣きそうな目で飛び込んできたのは、大学生くらいの女子。

肩にはボロボロのリュック。手にはレポート用紙が詰まったファイル。


「……三日連続で、知らない女の人に喉を裂かれて殺される夢を見るんです。怖くて眠れなくて……!もしかして……呪われてるんですか!?」





葛原美麗は静かに顎に手を添えた。

(第2ボタンまで開けた白シャツがちらりと見える)


「夢の中で殺された数だけ、君は“目覚め直して”るんだよ」


「え……?」


「で、その女。“知らない女”って言ったけど──本当にそう思ってる?」


女子大生の顔から、サーッと血の気が引く。


「……高校の頃、私……部活の先輩とケンカして……。

ううん、“いじめた”のかもしれません……。あの子、転校して、いま消息不明で……」





「おい、ジュリ蔵(←霊獣・仮名)、この子に何か憑いてるか?」


と、葛原が呼びかけたのは──白蛇のような形をした半透明の“霊龍”。


「ジュリ蔵って誰ですか!?」

女子大生がツッコむが、葛原は無視して続ける。


「……なるほど。生霊と罪悪感が混ざって悪夢化してるな。

ただの夢じゃなくて、“本人の精神が自動的にリプレイしてる地獄”だ。」





「呪詛は誰からかけられるものと思ってるだろ。

でも“自己呪詛”──自分で自分を呪ってる人間のほうが、実は多いんだよ」


女子大生は唖然としていた。


「じゃあ、私、どうしたら……?」





葛原は、棚から1枚の黒い封筒を取り出した。

その中には、手作りの札と、クラシック音楽のCD-R。


「この音楽(マーラー交響曲第2番)を流しながら、この札の上に紙に書いた罪と名前を置け。

“わたしは、わたしをゆるします”って唱えながらな。」





「……これで、夢は止まりますか?」


「止まる保証はない。ただし、変わる覚悟があれば、世界も変わる」





女子大生が帰った後、部屋の片隅から「チュウ」と鳴く声。


「葛原センセー!私の番まだですか!? 私、死んで三年になるハムスターなんですけど!」


──そう。葛原の店には人間の霊だけじゃなく、動物霊も相談にくるのだった。


「次は“毛玉さん”か。……おまえ、前世、人間だったろ?」


「バレましたかー!(キュイーン)」







👻次回予告(仮)


「俺のペットが喋りだした!?」


「怪しい高次存在“クラウン・ジュリィー”登場」


「先生が夜の繁華街で“闇スピ業者”とバトル!?」



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