剣狂いが聖剣の勇者になるまで

愚者

第1話 剣狂いの少年

 俺の名は、アーサー・ペンドラゴン。 


 俺は、俗にいう孤児ってやつだ。周りに仲間はいない、独りぼっちだ。


 でも、俺は孤独ではなかった。


 俺には剣があった。剣は俺を見放さないし、俺も剣は見放さない。だから、孤独ではなかった。


 俺が剣を持ったのはいつ頃だっただろうか?―確かあれは、2年前。俺が12の時だっただろうか。


 俺は昔、食い物にすら困っていた。持っているものはただ一つ、己の身のみ。だから、そこらから食い物を奪っては逃げていた。


 だが、そんなある日のことだ。俺は、盗賊団に会った。俺は、いつものように物を奪った。すると、彼らは銃で俺を撃った。


 痛かった。とても、痛かった。


 だが、奪ったものの中に剣があった。


 俺は、撃たれた後、その剣を持った。その時は、気持ちが高揚した。あぁ、あれが、忘れられない。あの時のあの感覚が。


 俺の視界が真っ赤に染まり、舞う。断末魔を放ち、抵抗むなしく散っていく。


 俺は、齢12の時に剣を初めて握り、盗賊団一つを壊滅させた。


 そして、馬車を引いて村に帰った。すると、街の人たちは俺を見て、ごみを見るような眼をした。だが、突如表情は変わった。その顔は、喜びと驚きに満ちていた。


 村人たちは、俺によってたかり、泣きながら礼を言った。


 そして、ギルドからは謝礼をもらった。


 その時気づいた。悪人ならばいくら殺しても罪には問われない。逆に、金がもらえる。いくら斬っても、いいのだと。


 それからというもの、俺は今日までずっと悪人を斬ってきた。


 それで気づいたのだが、俺は人を斬るよりも、強い人間と、命を懸けた極限状態で斬り合うのが好きらしい。


 一つ、剣先を見誤れば、死ぬ。その、己の剣技にすべてをかけるのが好きなんだ。一つの間違いで、命が消える。その瞬間が最高に好きなんだ。


 まぁ、昔話はここまでにしようか。


 今日は、冒険者登録をすることにした。前までは、登録もせずに世話になっていたから、14歳(冒険者登録のできる歳)になったから。


 冒険者ギルドに入ると、顔なじみのおっさん共が声をかけてきた。


「よぉ、アーサー。やっと冒険者になるのか」

「俺らのパーティ来いよ」


 まぁ、身寄りのなかった俺にとっては、こいつらは家族みたいなものだったのかもしれないな。


でもな、


「俺は、一人でやるよ」


 俺は、何故か誰とも組む気にはなれなかった。


 多分、こいつらに本性を知られたくないのかもな。


 そして、俺は受付のおっさんのところへと行った。このおっさんは元冒険者なのだが、怪我をしてしまい、もう冒険ができなくなってしまった。だが、冒険者たちにかかわりたいと言い、この職に就いた。


「よう、冒険者登録をしに来た」

「のようだな。じゃあ、この紙に血判をしてくれ」


 そう言って、おっさんは契約書と針を差し出してきた。


 俺は、針で少し指をつつく。ぷっくらと血の雫が出来上がった。その指を紙に押し付けた。その紙をおっさんに渡した。


「よし。じゃあ、この水晶を触ってくれ」


 たまにギルド登録をする人を見るから、これが何かは分かっている。


 触れると水晶が魔力を帯び、それによって属性が分かる。属性の種類は9つで、火、水、草、風、雷、土、氷、光、闇である。光と闇は珍しい。


 俺はただ無造作に手を乗せる。


 正直、魔法なんてものはどうでもいい。俺には剣がある。剣さえあればそれでいい。


 出た結果は...確かこれは、光属性のみか。


「おぉ、光か。もしかすると、エクスカリバーを引き抜けるかもしれないな」


 この国、ブリタニアの王都では、エクスカリバーという伝説の剣が、岩に刺さっているというのだ。


 その剣、エクスカリバーを引き抜いたものは、英雄王となれると言われている。


 だが、そもそもの話、それを引き抜くには3つの条件が必要らしい。この条件は、エクスカリバーを守護する精霊が言ったらしい。


 その条件は以下の通りだ。


 1つ、強き心を持つ者


 2つ、勇者の素質がある者


 3つ、私(エクスカリバーを守護する精霊)に認められること。


「それもまた一興だな」

「お前は、まぁ、そう言うよな」


 おっさんは、ため息交じりに、一枚のカードを渡してきた。


 冒険者カードだ。ランクは最初だし、銅級かと思っていたのだが...金級?


「おっさん、何かおかしくはないか?」


 おっさんは一瞬、何のことか分からなかったが、理解したように手をポンと打つ。


「ギルドは、今までのお前の功績を評価していてな、金級とした」


 それは異例の事態なのだろう。だが、俺が壊滅させた盗賊団は十数個にも及ぶ。だから、なのだろう。


「これから、どうるつもりだ?」

「まぁ、そうだな。王都にでも行ってみようか」


 特に当てもないが、ここらの盗賊団はあらかた壊滅させたし、強敵を求めて、とりあえず強いやつが集まりそうな王都にでも行こうかと思った。


「なんだ?エクスカリバーが気になったか?」

「まぁ、確かにそれもあるかもしれないな。でも、王都はやっぱ強敵も多いとおもってな」

「そうか、お前らしいな」


 おっさんの顔は少し寂しそうにも見えた。


「たまには帰ってくる。じゃあな、皆」


 俺はカウンターに背を向け、出入り口向かって歩いた。


「「「アーサーに良い冒険があらんことを!!」」」


 新人冒険者を送り出す定例を皆が、俺に言った。


 あぁ、少し寂しいかもしれないな。


 この日、俺は街を出た。




 これは、独りぼっちの少年が愛を知り、仲間を作り、勇者級冒険者【聖剣の勇者】と呼ばれるまでの、たった一、二年間の物語。





――あとがき――

 どうも、愚者です。

 この物語は、「不思議な世界の少女の神話ー神々の祝福ー」の英雄級冒険者【神殺しの勇者】アーサー・ペンドラゴンの過去の話です。

 本編でも、名前しか出ていないですが...。

 この物語は、本編にそこまでつながらないので、これだけ読んでもらっても十分に楽しめます。

 ですが、この物語が面白いと感じたのでしたら、どうぞ「不思議な世界の少女の神話ー神々の祝福ー」もよろしくお願いします。


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