第32話

 冒険者会議室。


 アリアとシャープの二人だけになっていた。


「人類の危機だというのに……何と勝手な人たちなんだ……四人は来すらしないし」

 シャープは嘆くようにそう言った。

「良いではありませんか。SSランクの魔物は手下も多数呼んでいるでしょうし、その手下の相手をさせればいいですわ」


 アリアは余裕そうな表情だった。


「サポートが出来る冒険者を集めてくださいませ。流石に一人では怪我をしてしまうかもしれません。それはエレガントではありませんわ」

「一人で戦って怪我で済めば良いんですがね……」


 あくまで一人でも討伐可能だと思っているアリアを見て、シャープは呆れながら呟いた。


「ほかの高位の冒険者たちは連携は期待できない以上、そうするしかありませんか。僕の知っている冒険者に声をかけてみます」

「ありがとうございますわ」


 ニッコリと笑顔でアリアはお礼を言った。


「まあ、もし見つからなければ、僕だけでなんとかしましょう。僕は高位の冒険者には珍しく、サポートもできるタイプですので」


 最後にそう言った後、シャープは急いで会議室から出た。

 アリアが一人会議室に残された。

 シャープが出てしばらくは済ました表情だったが、しばらくして青ざめ始める。


(どどどどうしましょう! SSランクの魔物!? めっちゃ強いって聞きますわ!? それをわたくしが中心で倒す!? 無理ですわ!?)


 地面に突っ伏しながら、アリアはそう言った。

 アリアには他人の前では気丈に振る舞う癖があった。


(今から冒険者引退しますか!? いや、さすがにそれは……でも死ぬよりはマシなような)


 引退までアリアの頭をよぎった。


「忘れ物……あ、アリアさんはまだ残っていたのね」


 突如エミルが会議室に乱入。

 アリアは何事も無かったかのように、一瞬で先ほどまでの澄まし顔に戻った。


「ええ。今、頭でどうやってSSランクの魔物を倒すのかシミュレートしておりましたの。邪魔はしないでほしいですわ」

「そ、そう……分かった。すぐに立ち去るわ」


 エミルは自分の席に行くと、忘れ物を

 取って、すぐに会議室を後にした。


(あ、危ない。突然来ないで欲しいですわ)


 エミルが去った後、アリアは額から冷や汗を流した。


(……まあ、やると言った以上、もう後には引けませんわね。めちゃくちゃ嫌ですが準備を始めますか……)


 心は弱気ではあるが、彼女は冒険者ランク2位の最強クラスの冒険者である。

 実力は並外れたものはあった。

 アリアはどんよりとした気分になりながらも、SSランクの魔物を倒すための準備を始めた。

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