第2話 幻の卵
とある日の昼下がり。私はいつも通りお客様の注文を承っていた。
「それでは、ご注文をご確認させていただきます。フライシュチーズフォンデュの激辛キムチ添えが一点。お飲み物に、ライモティーが一点。よろしいですか?」
このお客様は、50代後半ぐらいのおじさんで激辛料理が大好物らしい。数ヶ月前からここの常連としてよくきてくれている。
「はい」
「承知しました」
いつものように注文を受け、厨房に戻ろうとしたその時。
「あ、そういえば
「幻の卵?」
「はい、ここから北東に登っていくと『
「へぇ、初めて知りました!ありがとうございます!」
「まぁ、そこに行けるのは特級探究者の中でもほんの一握りらしいですけどねぇ」
この世界にはいろんな生物がいるので、もちろん好戦的で人を容易く襲ってくるような魔物もいる。そんな過酷な世界の中で目を背けず、新たな発見や発展のために人生のほとんどを旅や冒険に費やす人たちのことを探究者という。
探究者は基本的にその人がこなしたクエストの難易度と数から5級→4級→3級→2級→1級→特級と上がっていく。
上がっていけば行くほど得られる報酬も多くなり、なにより王家からの重要任務が任されるようになる。重要任務を達成することができれば内容によっては王家の有利な立場に立てる可能性もそう低くはない。
だが、みんなと言っていいほどほぼ全ての探究者はある一つの目当てで特級まで上り詰める。それは、王家直属の5つ星シェフの料理を無料でバイキング形式で食べられるのだ。これがまぁ美味しくて自分の兄が特級探究者まで上り詰め、その弟としてバイキングに出席した。まだ私は幼くて、たしか子供が好きそうなソーセージでも食べてた気がする。かけらを一つ、口に入れた瞬間だった。涙が出てきた。それほど美味しかったのだ。
以来、私はそんな料理人に憧れこのような形で自分の夢を掴んだ。まぁ幼い頃の自分は、もっと大きなレストランでたくさんの個性豊かな従業員たちと、もっと多くのお客様を笑顔にさせることを夢見ていたんだろう。時々昔のそんな夢を布団の中で見る。幼少期の自分には申し訳ないな。
「でも、大丈夫、、、」
「ん?どうかしましたか?」
「あ、すみません、独り言です」
ぼそっと呟いていたのが常連さんに聞こえてしまったらしい。
少し恥ずかしいなと思いながらも、決心した。
たくさんのお客様を笑顔にできないのなら、その分今来てくれている少ないお客様を笑顔にする。
「場所は、『
私は、食材調達のための身支度をしていた。
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