白洞寺つれづれ語り

白河 京夏

第1話 Day.1 まっさら (もしくは序文)

 俺は自由だ。

 もう何のしがらみもない。何も考えなくていいのだと。

 でもそれと同時に思った。

 何も持っていないのだ。

 自由というのは、何にもとらわれないこと。

 そうなる為には、全てを捨てなくてはならない。

 そして今俺は、全てを捨てたのだ。

 家も、友も、名誉も、役目も。

 全てを捨てた。全てを失った。

 その事を少し悲しく思ったが、その感情すらも風の彼方へと飛んでいく。

 自由になった俺は、まっさらだ。

 まっさらと言うのは、なんと身軽であることか。

 まっさらと言うのは、なんと不安であることか。

 まっさらと言うのは、なんと心地好いことか!

 何もない。何も持たない俺は、これからどこへと向かうのだろう。

 自由。自由。自由。

 持っているのは、我が身一つ。

 ぼんやりとした夢だけを胸に抱き、空を見上げた。

 爽やかな夏色の空。今日も一日暑いのだろう。

 まっさらになった自由な俺は、走り出す。

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