マグマ物語〜マグちゃんがワイングラスになるまで〜

晴れドコロ(旧・どこにでもいる晴れ男)

マグマである私がワイングラスになるまでのお話

 これは…地球の奥深くで生まれたマグマがワイングラスになるまでを示した擬人化物語である。


⚪︎まずは自己紹介

 地球人のみなさんこんにちは!

 私の名前はマグ。これは自分の名前…と言うより、私と同じようなものにつけられた『マグマ』から女の子らしい部分を取っただけ。

私が生まれたのは、地球の深ーい深ーいところ。マントル。


「あっつい…」


 そう。マグマである私自身、暑くて仕方がないのである。

今日も、熱い熱い地球の奥深くで、仲間たちとひしめき合っていた。


「はあ…なんか楽しいこと起きないかなぁ…?なーんて。」


 暇で暇で仕方なかった。だから、私たちは何か新しいもの、楽しいことに飢えていたんだと思う。

 今日も一日、ずっとここで過ごすのかぁ。ま、マグマに日付の概念なんてないんだけど。

 私たちは、何か『きっかけ』があるまで、ここに居続けるんだ。


⚪︎『きっかけ』 突然の上昇流…それはプルーム

 

ゴゴゴゴゴ…!


 突如大きな音と共に、私たちマグマ全体が動き始めた。上に上に。

 私は確信した。これは地上に出るチャンスだと。


「プルーム(上昇流)だ…!」


 そういっている間にも、私たちはぐんぐんと上に上がっていく。

 

 細いマグマの通り道、一部の仲間がそこに取り残された。


仲間「いけ!俺たちもいつか必ず、外に出るから!」


 その言葉を背に受け、ぐんぐんぐんぐん上がる、上がる。

 

しゅうううううう…!

 

 プレートの境を越えてあるポイントにきた時、突然、私たちは止まってしまった。

 地下数kmにあるマグマだまりについたのだ。

 地上まであと少し…!



⚪︎数ヶ月後、再び地上に出るチャンスが来る

 私たちは再びひしめき合っていた。

 プルームが起きてから、もうすでに数ヶ月以上経っていたが、ずっと何年も地下深くにいた私たちにとってそれは苦でもなんでもなかった。

 

 そして…私たちに再び、地上に出るチャンスが訪れる…。


ゴゴゴゴゴ…!ゴゴゴゴゴ…!


 揺れ始めた。


「いっくぞー!」


仲間たち「おおおおおぉっ!」


 私たちは勢いよく上昇していく。

 上へ上へ上へ上へ!

 止まらない。止まってしまってはいけない気がした。

 光が見えてくる。

 そこを目指して。一直線。


「いっけぇ…!」

 

 しかし、突如岩が私たちの進行を邪魔した。

 ああ…いけないの?これで終わっていいの?


「…いや!そんなわけないでしょー!」


仲間たち「その通りだ!おおおおおおっ!」

 

 私たちは止まらない。岩を避け、壁に激突する。

 壁が圧力に負けて、すこしずつすこしずつ凹んでいく。

 

「おおおおおおっ!」


仲間たち「おおおおおおっ!」


 そして…遂に、外へ出る時がやってきた!


⚪︎ニュース速報(人間視点)

「速報です。たった今、北海道有珠郡にある昭和新山が噴火したとの情報が入りました。」

 ニュースでは、昭和新山の突噴火がトレンドにあがっていた。

 なんとも、既存の火口ではなく、火山の一部を吹き飛ばして、新たな火口から噴き出したらしい。

 溶岩が流れ出たがすぐに固まった。

 幸いにも 死傷者は1人たりとも出なかったそうだ。



⚪︎噴き出した私は冷やされて…(マグマ視点)

 大きな穴を開けて、外へ飛び出した私たちは、溶岩になった。

 でも、すぐに冷え固まって私たちは火山岩に。

 動けない。けど、念願の地上だ!

 仲間たちは軽石や火山弾になってどこかへと飛んでいってしまった。

 

 私は今、流紋岩。石英やカリ長石、それにちょっとだけ、黒雲母が含まれてる。

 みんなは私を班状組織の火山岩って言うんだっけ?

 

 あれ、ちょっと眠いな。さっき力を使って疲れちゃったかな…。

 おやすみ…。


プツンッ…


 視界が暗転し、私の意識はそこで途絶えた。



⚪︎目覚め

 

「うう…うん?ここは…?」


 長い時がたち、私は再び意識を取り戻した。

 とある店の中、私の上にはお酒が並々と注がれている。

 ここは都内のとあるバー。

 火山近くから切り出された私は、ワインなどのお酒を飲むグラスとして、人間に使われているのであった。

 

「念願の地上で人間の役に立てるなんて、嬉しいなぁ。」

 

 これからも私は地上で過ごす。

 仲間たちもきっとどこかで形を変えて、人間の役に立っていると思う。

 きっとそうだ。

 


 またいつか…どこかで会えることを信じて…、私は今日もお酒を注がれているのだった。


 そして…店にやってきたある人がつけていたガラスのブレスレットを見て…。

 

「久しぶり!」


 私、マグは、懐かしい仲間との再会を、長い時を経てやっと果たしたのだった…。

 

《完》




※読んでいただき、ありがとうございました!

マグちゃんのイラスト、リンクを3つ貼っておきます。  

  

マグマ 

https://kakuyomu.jp/users/hare_tutsi_yo/news/16818792436207006008

 

流紋岩

https://kakuyomu.jp/users/hare_tutsi_yo/news/16818792436207127910


ワイングラス

https://kakuyomu.jp/users/hare_tutsi_yo/news/16818792436207340286


 

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