【第10章:告白と終焉】

冬の夜、冷たい風が吹き抜ける校舎の屋上。


直樹の前に立つ京子の表情は、どこまでも穏やかだった。


「私ね、ずっと直樹のこと、見てたんだよ」


その言葉に、直樹の胸が締めつけられた。


「洋子のこと、隼人のこと、全部知ってた。……というより、私が……仕向けたの」


風の音にかき消されるような声。それでも、その言葉の重みははっきりと直樹に届いた。


「洋子が隼人に相談してたこと、偶然知ってしまったの。ふたりの間に、少しずつ何かが生まれていくのがわかった。怖かった。……だって、直樹が洋子を見る目が変わっていくのが、私にはわかってたから」


京子の目に涙がにじんでいた。


「私だけが、ずっと見てたのに。……私だけが、必要としてたのに」


直樹が言葉を探すより早く、京子は一歩、柵の向こうへ身を乗り出した。


「だからね、もう大丈夫。全部、私が終わらせるから」


「やめろ、京子!」


直樹は叫んだ。


京子は微笑んだ。


「サヨナラ、直樹」


風が吹き抜けた——その刹那、彼女の姿は、夜空へと消えていった。


直樹はその場に崩れ落ちた。


——救えなかった。


また、誰かを。


そして空を仰ぎ、呟いた。


「……もう、誰も失いたくない」


彼の決意が、新たな未来への一歩となることを、このときの彼はまだ知らなかった。

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